真相編C | ナノ
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浅森01「麻衣子さんを殺した犯人は、戸田くん、あなただよね」
戸田02「俺が残したのは『結果』だけだよ。あいつを殺したのはここにいる全員だろ?」
高橋03「待って、その理屈じゃ浅森さんに罪はないでしょう?」
浅森04「ううん、あるの」
高橋05「え?」
浅森06「あるの、あなたたちと同じような罪が」
相原07「あたしたちと…?」
白井08「同じような…?」
関09「あんたにはないんじゃなかったの?『断片的な記憶』が」
浅森10「うん、『断片的な記憶』はね」
十川11「まさか…!」
浅森12「そう、私には最初から『そんなもの』じゃなくて『既に出来上がったパズル』が見えてたの」
宝生13「全部…覚えてたのか…?」
浅森14「そう…私は、私の持つすべての記憶を覚えていたの。私は…全部見てた。齋藤さんが手紙を出すところ、一ノ瀬くんが忍び込むところ、麻衣子さんが関さんや男の人たちに襲われるところ、…そして戸田くんが麻衣子さんを殺す瞬間を。見てただけ…見てただけなの…」
一ノ瀬15「フライングじゃないか」
岸16「お前は黙ってろ!」
相原17「そんな…たくさんの偶然に巻き込まれてたの…?なんで…ずっと黙ってたの…?」
浅森18「…」
岸19「何にしてもアイツが麻衣子を殺したことにはかわりないんだろ?兄貴なのに…なんで?!」
戸田20「望んだんだ」
岸21「は?」
戸田22「死にたい…生きていたくない…って麻衣子が言ったんだ」
白井23「だからって…!殺してしまうなんて…!」
戸田24「お前らに何がわかるんだ!!麻衣子に危害を加えたり、麻衣子を見捨てたお前らに!!」
関25「…っ」
戸田26「ずっと…二人で頑張ってきたんだ…働きながら…あいつを守ってきたんだ…!」
一ノ瀬27「大変な家計を君が支えて…みたいなこと言ってたしね」
戸田28「俺はどうなってもいい。麻衣子が楽しければそれでいいって、思ってきた。でもあの日…」

-回想-
戸田29「おい、どうしたんだ麻衣(言いかけて)」
麻衣子30「お兄ちゃん…お兄ちゃん…私もう死にたい…消えてしまいたい…」
戸田31「麻衣子…?」
麻衣子32「生きていたくない…もう…いやなの!!!」
-回想終わり-

戸田33「麻衣子が望んでいること…叶えなくちゃ…って、この手で…あいつの首を…」
浅森34「うそ」
戸田35「!」
浅森36「うそだよ…戸田くんが麻衣子さんを大事に思っていたことは本当だと思う、でも…!」
戸田37「でも?」
浅森38「あなたの両腕の包帯は…あなたが生きたかった証…」
戸田39「…」
浅森40「包帯の下に傷はなかった。なくて良かったの。それこそがあなたの目的だもの。手を掴まれても、傷が付いてしまわないように…あなたが犯人だとわからないように」
十川41「包帯は『証拠を隠すもの』じゃなくて、『証拠を作らないためのもの』だったんだね」
浅森42「戸田くん…あなたは…あなたの人生を…」
戸田43「生きるすべてだったんだ…妹が」
浅森44「…」
戸田45「麻衣子のために何もかも捨てて頑張ってきた。『俺が生きる意味』だった。なのに…あいつ『死にたい』って言ったんだ」
浅森46「戸田くん…」
戸田47「俺の努力が音をたてて崩れてく気がした…楽しみも何もかも捨ててやってきたのに…って、気付いたら、あいつの首を絞めてた」
岸48「くそ…っ」
戸田49「衝動的にやったつもりなのに、ちゃんと偽装工作してんだから、俺はやっぱり…自分を守りたかったんだな」
浅森50「戸田くんは…優しいんだよ…優しすぎたんだよ…だから…」
戸田51「なんで…浅森さんが泣くの?」
浅森52「戸田くんは…何も覚えてないんだね」
戸田53「…え?」
高橋54「で、どうなるの?犯人は分かったわよ、ここから出してもらえるの?」
白井55「あなたよくこんな状況で…!」
高橋56「待ってたって何も始まらないわ」
戸田57「大丈夫だよ、お前たちはちゃんとここから出れるさ。…そうだろ?麻衣子」
浅森58「!!!」
一ノ瀬59「やっとお目覚めってわけか」
齋藤60「あなたが…『麻衣子』さんなんだね」
まいこ61「…」
齋藤62「きっかけを…この事件のきっかけを作ったのはまいなの…だから…だから…ごめんなさい…!」
相原63「まいちゃん…」
齋藤64「ごめんなさい…!ごめんなさい…!!」
一ノ瀬65「……」
浅森66「待って!!」
戸田67「?」
浅森68「本当に…何も覚えてないの?私のこと…何にも…」
戸田69「…分からない」
浅森70「……そっ…か……」
戸田71「さあ時間がもうない、早く殺れよ、俺を」
まいこ72「…お兄ちゃん…お兄ちゃん、一緒にこっちへ行こう?」
戸田73「大丈夫…一人にして…ごめんな?」
まいこ74「お兄ちゃん…お兄ちゃん…ごめんね…ごめんね…?」
浅森75「戸田くん!!」
戸田76「!」
浅森77「(泣きながら)私、浅森かや!!浅森かやって言うの!!私の名前は…浅森かやだよ!!」

回想
戸田78「はい、落とし物。こんなに重い物ひとりじゃ大変じゃない?」
戸田79「意地っ張りなとこ、俺の妹に似てるよ」
戸田80「君の名前は?」
浅森81「私は…私の名前は…」


戸田82「…!!(ハッとして)……ふっ(笑って)」

すーーっと消えてくような音
(どかーーーんではない)


岸83「……っ?消えた…」
関84「これで…終わったの…?」
白井85「元の世界へ帰れるの…?」
相原86「帰れても…ココに来た記憶はそのままなのかな…」
高橋87「当たり前でしょう?『その記憶』を一生背負って生きていくの。それが…私たちへの復讐なのよ…。それが…私たちの罪滅ぼしなのよ…」
齋藤88「罪を背負って生きていくことの辛さを噛み締めて…『生きていく』んだね…」
宝生89「生きることの方が辛いという気持ちを感じさせたいのか、その中でも生きる意味を見いだせっていう彼女からの課題なのか…真意は分からないけどね…」
十川90「どちらにしても、『これから』が問題なわけだね」
一ノ瀬91「だから、前を向かなきゃ!ってことみたいだよ、浅森さん」
浅森92「…!」
一ノ瀬93「大丈夫、戸田くんは最期に笑ったよ、ちゃんと君のこと、思い出したんじゃない?」
浅森94「…そう…なのかな…」

ゴゴゴゴゴ…

十川95「…!この部屋崩れ始めてるよ!!」
宝生96「空間が…歪んでいく…」
関97「私…忘れないから…精一杯償っていくから…」
岸98「皆…同じこと考えてる…」
白井99「うん…」
相原100「ごめんね…麻衣子…」
齋藤101「皆で…手、繋ごうよ…同じ気持ちでいれるように」
高橋102「ここであったことを、一生忘れないために」

浅森103「さようなら…戸田くん…」

今度こそドカーーーーン



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