私だけを見て。


私の彼氏、右代宮戦人は、ものすごくモテる人だ。
彼の気さくな性格が、きっと周りを惹きつけているのだろう。
かく言う私も、もちろん戦人のそんなところが好き。
だけど、たまに嫌になるときがある。
何故かと言うと…。


「戦人ー、今日放課後空いてる?」

「私らと遊びにいこーよ」


彼女がいると知っているにも関わらず、こういった誘いが全く減らないからである。


「あー、悪いな。先約がいるからさ」


今日は私との約束があるから、断ってくれたみたい。
これが、ないときでも断ってくれたらいいのだけれど、少しばかり鈍い彼は誘いを受けてしまうのだ。
今日こそは、今日こそは嫌だって言うんだと、私は心に決めていた。

そして放課後。
帰り道で、私は思い切って口を開いた。


「あのね、戦人…」

「ん、どうしたんだよ●●。深刻そうな顔して」

「あのさ…、あんまり他の女の子と約束とかしないで欲しいの」


何とか言えた、と胸をなで下ろして戦人を見る。
するときょとんとした顔をしていた。


「いきなりだな」

「前から、言おうと思ってたの…」

「もしかしてさ、」


先ほどの表情から一変し、今度はニヤニヤし始める。


「ヤキモチ、妬いてたのかよぅ?」

「…う」


思わず言葉が詰まる。
何故こういうときに限って、勘が鋭いのだろう。


「どうなんだよ、●●」


戦人の急かす声に、私は白旗をあげることにした。
大人しく、彼の問いに答える。


「うん…ヤキモチ、妬いてた」


言った瞬間、効果音がもし鳴るなら、ぎゅーっといった風に強く抱きしめられた。
いきなりのことで、思考は停止状態。
しばらくして、ようやく少し頭の整理ができるくらいに戻ってきた。
けれど、まだ私は彼の腕の中で。
心臓が煩いくらいに高鳴っているのが、よく分かった。


「あ、あの、戦人?」

「何だよ」

「いきなり、どうしたの?」

「●●が、可愛いこと言いやがるから…」


下から顔を覗き込むようにして戦人を見ると、髪の毛と同じくらい顔を真っ赤にさせた彼と目が合った。


「見るなよ…」

「戦人、顔真っ赤だよ」

「…●●も、真っ赤だぜ?」

「えっ嘘…恥ずかしい」


顔を彼の胸にうずめる。
ふわっといい香りが、鼻いっぱいに広がった。


「●●、もう他の女子とは約束しねぇから安心してくれ」

「うん…。戦人、ありがとう」


彼の背に腕を回し、私もまた強く抱き締める。
心地よい温もりに、私は戦人のことがすごくすごく大好きなんだなと実感した。



私だけを見て。
(なんて、言わなくてよかったあ)(どうしたんだよ、また顔赤くして)(えっな、なんでもない…)(さてはエロいこと考えてたな)(なっ、戦人の馬鹿!)





晴空さま、お待たせしてしまい本当に申し訳ありませんでした(土下座)
最後は可愛く終わらせたかったので、あんな感じになりました。
楽しんで頂けたらなら幸いです。
リクエストしてくださり、本当にありがとうございました^^*

20101117




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