領×聖
23時11分
その電話は、唐突だった。
唐突すぎて裏が読めなかった…いや、元々裏表なんて存在しなかったのだろう
「お風呂に入りました。寝ようと思ったのに寝れません」
━領くん、どうにかしてください
そういう電話の主は、俺の想い人で。
どうにかっていうのはどういう意味として取っていいのだろうか。
思春期なお年頃としては咄嗟というかほぼ発作的にそういう考えをしてしまう訳で。
普段から口数の少ない彼は、無駄な部分を省いて話すのが得意なんだけど、時として必要な部分も無駄として省いてしまう。
今回がいい例だ。
「…聞いてますか?」
もう一度、耳に届いた声に我に帰る。
さてどうしたものか。
想い人が自分の手によってとろける様子を一瞬でも想像してしまった故に、俺の身体は妙に熱を持ち始めてしまった。
「えーと、聖くん?どうにかってのはどうして欲しいんだ?」
「そんなの聞かれたって知りませんよ」
これは参った。
対処法は本人にもわからないときた。
こんな彼の事だ。
きっと俺の邪で俗物な感情もきっと気付いちゃいない。
「そうだなあ…とりあえず、お前ん家、どこ?」
嗚呼、駄目だよそんな簡単に家の場所とか教えたら
23時15分
まだまだ、夜が明けるには時間がある
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