伊織×柑流




ねえ柑流、今日の夜から明後日までうちに泊まりにこない?

そうノートの端に書いてそっとノートを横にいる柑流の方にずらす。
柑流はチラッと横目でそれを読んで、少し考える仕草をして、なにか思いついたのか、同じように自分のノートに書く。

いいわよ、丁度新しいDVD借りたの。
一緒にみましょう?

授業を聞き、ノートを取りつつも会話は休めない。遊んでいるのに真面目な生徒と思われてる。
そして先生が回ってくる前に書いた文は消す。
このちょっとしたスリルが余計に楽しくてやめれない。

あら、素敵ね。
丸も柑流が来たら喜ぶわ

私の家でこの前飼い始めた猫、丸は柑流が大好き。
多分柑流は遊ぶのが上手だからだと思う。ほんとに上手で流石猫好きって感じね。

丸に会えるのも楽しみ。
荷物準備したらすぐに伊織の家に行くわね

ええ、待ってるわ。

私が返事を書いて、柑流が読み終わったくらいの時間に6限の終わりのチャイムが鳴る。先生が教室から出て行って、柑流の顔をみたら、柑流もこちらを見て楽しそうに口角をあげてた。まるで、「こんなに話してるのに気づかないなんて先生ぼんやりしてるのね」とでもいいたげで。だから私は口に出す。

「ほんと、先生ってどこみてるのかしらね?」

と。
柑流は小さく頷いて立ち上がる。
もう下校だ。
今日は時間を無駄には出来ない。楽しいことが待っていると、どうして胸がはずむのかしら!

「柑流、帰りましょ?」

「ちょっと待って伊織、ドアの前に貴方に用がある男子が来てるみたいよ?」

柑流が指差した先では、丁度その男子がクラスの子に私を呼んでほしいって言ってた。

「あら柑流するどいのね。じゃあ、」

呼ばれる前に帰りましょ?

それだけ言って柑流の手を取って教室からさっさと出て、近くの柱に隠れる。
下手に移動して、相手に見つかると逆に厄介なことになるのは前に経験済み。


教室の中では私を呼ぶ声の後に、あー、帰っちゃったみたいだよ、なんて声が聞こえた。そっと教室の方を覗くと、私たちとは逆方向にその男子が行くのが見えた。

「よかったの?呼び出されなくて」

柑流が楽しそうにクスクス笑う。
逃げるのが楽しかったのだろうか、こっちはばれないようにヒヤヒヤしたというのに。

「だって、今日はお泊りよ?内容のわかってる呼び出しなんて行くのがもったいないわ」

そう言って改めて手を絡めると、柑流はそれもそうね、と頷いた。

(それじゃ、いきましょうか?)
(ええ。あ、柑流、なんの映画借りたの?)
(ふふ、楽しい感じの映画、かな?)
(あらそうなの?楽しみね)




















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