伊織×柑流
「柑流を見てると、すごくカステラが食べたくなるのよね」
なんでかしら。
伊織は私のノートを写しながらそう言った
決して、伊織がいつもノートを写していないというわけではなく、伊織の文字を書くぺースが若干遅いだけ
だから書ききってないのに先生に黒板を消されちゃうの
「私云々じゃなくって、伊織は元からカステラ好きじゃない」
私も書く手を止めずにそう答えた
「あの仄かに香る卵の匂いがいいの。ってそこじゃなくて」
それとこれとは別なのよ、と言って伊織は私の手元を覗き込む。
そして見ただけじゃわからなかったみたいで、さっきから何してるの、と聞かれる
私は私であみぐるみの図案を簡略化して書き出していた。
「…あみぐるみの基本書いてる」
編み物にだけはすごく疎い伊織は、ふーんって言ってるけど多分理解してない。もとい、する気もきっとない。
「ね、それ何になるの?」
図案の書かれたそれを眺めながら伊織がそう尋ねる。カエルにしようと思ってるって言うと伊織の目がちょっとキラキラする。
伊織はカエルの小物が大好き。だからコップとかお弁当箱とか小物は大体カエル。
「柑流、どの位の大きさ?」
「そうね…身体も合わせてこの位」
人差し指と親指を10cmくらい離して見せると、可愛いだろうなぁ、なんて呟く
こういうときの伊織ってすごく可愛い。いつもはなんていうか、綺麗とかそんな風に見られてて実際すごく綺麗なんだけど、こんな姿は私しか知らない。
「これ、完成したら伊織にあげる」
「え…いいの?でもなんだか悪いわ」
そう言いつつも嬉しそうに顔を綻ばせてたら全く意味がない気がするけど、これも私にしか見せない表情だから、まあいっかなんて思っちゃうの
「気にしないで、どうせ私は作るのが好きなだけだから」
だから早くノート書きなよって言ったら、すごい頑張ってノートを写し始めた。
それでも私より遅い伊織が可愛くて、誕生日にはおっきいカエルのあみぐるみをあげようなんて思ってしまうんだから、私も伊織に甘いわね。
(柑流…ノート終わった…)
(お疲れさま。…家にカステラあるんだけど、食べに来る?)
(あら、さっきの話覚えててくれたの?もちろん喜んで行くわ)
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