捺希語り



彼女は、幼い時から人付き合いに関してひどく臆病でした

きっと無意識ながらに、その人との関係が永遠ではないと知っていたのでしょう
だからこそ、楽しそうな会話の輪には自分から入っていったし、誘われたら極力遊ぶようにしていた記憶があります

彼女の心は、いつも孤独感で満ちていました
きっとそう言ったら周りの人は家庭環境がいけないんだというでしょう
家族間は良好でした
両親自体も仲がすごくよかったのも確かです

いつからか、彼女は独占されたいという考えを持つようになりました

小学生の頃は、付き合いは浅く広くでしたが、中学生になった頃にはもう少し知恵を使い、嫌になったらすぐに相手を代えられるように周りに数人残しつつ、一人の友達と、自分が傷つかない程度に一緒に行動する事を覚えてました。
そうすることで、疑似的に欲を満たしていたのです

彼女には好きな人がいました

小学生の頃から仲がよく、彼女が唯一、付かず離れずで関係を気づいていた人です
しかしその相手は彼女と同じ性でした
彼女はその想いを伝える気はありませんでした。彼女は怖かったのです。2人の関係が壊れてしまうのが
なので彼女は、極力その想い人に冷たく接しました

そして2人は、高校生となり、会うことはほとんどなくなりました。

それでも2人の関係は手紙で繋がりました。
彼女は想い人に少しだけ素直に接するようになりました。
そして、会ってもいないし電話も滅多にしないのに何故だか2人の関係は深まったのです。
そして手紙の中で数々のことを知ったのです。
想い人は実は独占欲が強くて、昔から彼女が他人と仲良くしているのを見ては気分を害してたこと。
思っていたより自分が大事にされていたこと。
その言葉だけで、今まで誰も満たせなかった彼女の欲は満ちたのです。

けれども彼女たちは、お互いの全てを信用できませんでした

信じていたいのに、どこかで疑っている。
何を思い、どう感じているかが何一つわからない。
彼女はそれが辛くて、苦しくて、何度も涙を流しました。
きっとこの不信感がいつか2人の関係を滅ぼし二度と再構築できなくなるであると悟っていたのです。

そして、その時は訪れました

あっけない終わりでした。
きちんとしたお別れの言葉もありませんでした。
不思議と涙は出ませんでした。
そして想い人との連絡が途切れてからもうすぐで一月が経ちます。
彼女の心も大分落ち着いてきました。
落ち着いた、というより感情が少し欠落した、の方が正しい気がします。

そして彼女は初めて、想い人が好きな曲をきちんと聴いてみました

単なる気まぐれでした。
けれどもその歌はあの時の彼女たちの関係を如実に表していた歌でした。

彼女は、連絡が途絶えてから初めて涙をながしました。
少しだけ、想い人が何を考えていたかがわかった気がしたのです。

そして彼女は同時に理解しました

この先、どんなに素敵な人に会っても、あの人よりも彼女を理解し受け止められる人がもういないことを


さようなら
愛し君、悲しい恋
(嗚呼それでも、私にとって何よりも幸せな恋でした)







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