領語り
高校を卒業してから、そろそろ3ヶ月が経とうとしていた。
これまでの生活は大分順調だったと思う。
勉強にもついていけたし、挨拶を交わす程度の知り合いも出来ていた。
元々、愛想はそこそこ良い方だっから、一人でいることもそんなになかったけど、全体的に浅く付き合っていってる。
その方が俺の性格には向いてるらしい
「(ああ、それでも一人、仲のいい奴がいたな…)」
俺とは真逆のタイプの、冷めた面して世界を諦観してた、あいつ。
あいつとは、仲がよかったどころか、むしろそれ以上の関係だった。
最初は俺の片想いだったのに、お互いがお互いを想いあって、幾度かは身体さえ重ねた間柄だった。
どうして、今まで忘れていたのだろうか。
…いや、忘れていたんじゃない。
無理矢理にでもあの記憶を心の奥底へ閉じ込めようとしていた。
そして俺は、閉じ込めることに成功しかけていた。
それでもやはり心のどこかで恋しいと思っていたらしく、まだあいつの声や仕草なんかが簡単に思い出せて、切なくなる。
思い出したら急激に恋しさが募って、あいつに会いたくなって
「…聖」
名前を呼んだら、もう終わり。
穏やかだった俺の3ヶ月はみるみる音を立てて崩れていった。
さて、あいつは今なにしてるかな。
また俺と仲良くなる前みたく、全てを諦めた目で色んなもの見てるんだろうな
今日の講義はいっそ全部サボろう。
最初とは逆に、こっちから電話で呼びだそうじゃないか
(なあ、お前いないと今度は俺が眠れそうにねぇよ)
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