Don't touch !
サラサラとした感触が、すげー好きだ。
風が吹けばなびいて、細くて白い首を少し晒したりして、
たまにまとめたりすると、後れ毛が妙に色っぽくて・・・
あの髪に触れるのは、男じゃ俺だけの特権・・・だろぃ?
久々のデート。
日曜日に学校以外で一日中会えるのは久々で、待ち合わせは駅に10時。
多分、店とかまだ開いてないだろーけど、どっかで軽くメシ食ってりゃいい時間になるだろぃ。
吐く息が白いことに気がついて、上着のポケットに手をつっこむ。
「さむっ・・・」
ポケットの中に入れてた携帯のサブディスプレイを光らせると、『9:50』って時間表示。
あと、10分。
このままのペースだと2・3分遅れるかもな。
そう考えて、少しだけ歩調を早めて歩く。
こんな寒い中待たせるのもわりーし・・・
まぁ、アイツ以外のヤツならいくらでも待たせるんだけどな。
待ち合わせ場所手前の交差点。
赤信号にひっかかって、思わずため息。
信号がかわるのを待ちながら、待ち合わせ場所へと目をやる。
ここからだと、もう見えると・・・・・・・・・・いた!
白いコートを着た目当ての人物を見つけて、知らず顔がにやける。
青信号にかわった瞬間、待ち切れずに走る。
いつものように満面の笑顔で俺の名前を呼ぶアイツを想像して―――
あと数歩ってところで、それはあっけなく崩れ去る。
「静!」
名前を呼べば、笑顔を見せる静。
それはいつも通り。
けど、そんな静の横に立つ男だけが『いつも通り』とは違っていた。
20代半ば・・・くらいか?
茶色っつーか、黄色に近いような髪色の男が、馴れ馴れしいくらいの態度で静の髪に触っていた。
それだけで、頭が沸騰しそうになる。
しかも、静はそれをちょっと困ったみたいに笑いながらも許してた。
ぎゅっと思わず拳を握る。
「静ちゃん、彼氏?」
男が、静の髪から手を離して首を傾げる。
男の言葉に、照れくさそうに頷く静。
「それじゃ、彼氏に睨み殺される前に、俺は退散するよ。」
ポンと男は静の頭に手をのせる。
「それじゃ、また近いうちに。」
「はい、また。」
静の返事に満足するように笑うと、静に手を振って去る男。
それに手を振って返すと、静はくるっと振り返る。
「お待たせしました!」
笑う静は、もう『いつも通り』だった。
寒いからとりあえず、どこかの店に入ろうと静を誘う。
さっきのことは気になるけど、正直聞きづらい。
妙に仲良さげで、次の約束らしーもんもしてたし。
兄貴はいねーし。
父親・・・は、ないな。
何とか上手く聞き出せないもんかと、考える時間が欲しくて指差したのは、ここから少し離れたところに見えるカフェ。
店につくまでに考えるか。
そんなことを考えながら歩きだそうとしたところを、静に腕を掴まれて止められた。
「静、どーした?」
「・・・どーかしたのは、先輩です。」
「は?」
「何かありましたか?」
「なんで・・・?」
「いつもと違いますから。」
はっきりきっぱりと静が言う。
俺の『いつも』・・・か。
自分では気づかねーけど。
俺が静の『いつも』がわかるように、静にも俺の『いつも』がわかるのか?
そう思うと、なんつーか・・・嬉しい?
さっきまでムカムカイライラしてたってのに、
単純すぎるだろぃ・・・
「あのよー、さっきの誰なんだ?」
驚くほど、すんなりと言葉が出る。
よくよく考えてみれば、静が浮気とかするはずねーし。
この態度見れば、一目瞭然だろぃ。
余計な心配するだけむだムダ無駄!
「親戚か?」
従兄妹とか・・・
案外、聞けば笑っちまうようなもんかもしれねーし?
静の顔を見下ろして、ふとさっきの男が触れてたことを思い出す。
触れてた部分に、俺の手で重ねて触れる。
消毒消毒。
あ〜、やっぱり触り心地がい〜よな。
俺以外の男が触るってのは正直納得いかねーけど、親戚なら別だよな。
・・・納得いかねーけど。
「違いますよ?」
外が寒いせいか、それとも急に髪に触れたせいか。
少しだけ頬を赤らめて、返事をする静。
髪に触ることに気が向いて、一瞬反応が遅れる。
「は?」
「だから、違いますよ、って言ったんです。」
親戚でもねー男が、あんな風に髪に触るのか?
「じゃあ―――」
「いつも行ってる美容室の美容師さんなんです。」
どういう関係なんだって言葉は、静の声と重なり思わず飲み込む。
ビヨウシ・・・って、美容師ぃ!?
そりゃ、男もいる・・・よな。
けど、美容師かよ・・・
美容師なら、髪に触るよな・・・
美容師・・・美容師・・・ねぇ。
「ブン太先輩?」
「あ?」
「それがどうかしたんですか?」
「いや、別に・・・」
別にってワケねーのに・・・
「あのよ?」
「はい。」
『美容師、変えねぇ?』
とか、言ったら引く・・・か?
あ〜、くそ!!
我ながら、独占欲が強すぎるだろぃ!!
5000hit キリリクでブン太×静でした。
ブン太がヤキモチやくお話を・・ってことでしたが、
こんな感じでいかがでしょうかっ??
よくよく考えてみるとブン静書くのが久々すぎて驚きました。。笑
こちらは、リクエストくださった方のみ
お持ち帰り可能となっております。
葵さま、リクエストありがとうございました!!
2009/12/03