Two heads are better than one.






「ワイ・・・自信ないわ・・・」



テニス部の部室で、ポツリと発された呟き。

その場にいた部員たちは、思わず動きを止める。

声で誰の言葉かわかってはいたが、いつも元気・・・というより能天気な雰囲気を持つらしくないその言葉に、信じられないという面持ちで声の主である金太郎に視線を向けた。










「金太郎? 変なもんでも食うたんか?」



部長の白石が金太郎に声をかける。

他の部員たちも同じような言葉を金太郎へと向ける。



「ワイ・・・どないしたらえぇんか、わからんねん。」



言葉尻に吐いたため息は大袈裟なくらいに大きい。

普段の金太郎なら、

「ため息ついたら、幸せがどっか行ってまうわ!」

と、吐いた息をもう一度吸い込んで見せるくらいはしそうなものだが、今日は違うようだ。



「テストの点でも悪かったんか?」

「あんだけ注意したのに、拾い食いでもしたんやろ?」

「前に購買で食うてウマいゆうてたパンが売り切れやったんか?」



今まで見たことがないくらいに気落ちした様子を見せる金太郎に、部員たちは冗談混じりに問いかける。

普段であれば、つっこみの一つや二つ・・・三つや四つも入りそうなものだが、金太郎はもう一度大きなため息でもって返事をした。





「ほんまにどないしてん。 病気か?」

「・・・病気よりもつらいねん。」

「って、お前病気なんかしたことないやろ!」

「せやけど、つらいねん・・・」



つっこみに対して、金太郎はやっぱりスルー。

部員たちは顔を見合わせる。



「悩み事でもあるんか?」



白石がさっきよりも真剣に問えば、金太郎は顔を上げて、一拍後、こくんと頷いた。





「しゃーないな。金太郎が悩むなんか滅多にない事や。ゆうてみ?相談のんで?」

「ほんまに?」

「あぁ、ゆうてみ。楽になるかもしれんやろ?」



その言葉に、金太郎はキラキラと期待に輝かせた瞳でもって白石を見上げる。

白石が頷くのを見て、金太郎はパイプ椅子に座る白石にすがるように飛びついた。





*****





「ワイ・・・『デート』ってどこに行ったらえぇんかわからんねん!!」

「・・・・・・・・・は?」

「せやから!デートってどこに行くもんかわからんゆうてんねん!」

「デート?」

「誰が?」

「ワイが。」

「誰と?」

「静と。」



今度は部員たちが大きくため息をつく。

珍しく悩んでると思ったらそんな事かと呆れた様子を見せる部員たちの中、



「・・・まぁ確かに、金太郎にとったら大問題やな。」



最初に口を開いたのは、忍足だった。





「ベタなとこで、映画とかどないや?」

「戦隊モン?」

「アホか!そんなもんなんで彼女と観に行くねん!」

「あかん、あかん。 金太郎は5分以上じっとしとれんやろ。」

「せやかて、映画ゆうたら真っ暗な中でじーっと動かんと観なあかんのやろ?」

「金太郎にじっとしとけゆうんは無理あるで。」

「せやな。」

「ほな、動物園とかどーや?」

「考えてみ?金太郎のことや、入るな書いてあるトコどんどん行きよるで。広瀬が大変なるんが目に浮かぶわ。」

「ほんなら、買いもんとか・・・無理か。」

「たこ焼き買(こ)ーて終わりやな。」

「スポーツ観戦は?」

「高(たこ)つくわ。」

「ゲーセン。」

「広瀬がおもろないやろ。」



「「「「「「う〜〜〜〜〜〜〜ん・・・」」」」」」



「いっそ、広瀬に聞いてはどうだ?」



ほとんどの部員たちがあーでもないこーでもないと腕を組んで考える中、同じ恰好でロッカーにもたれたまま今まで一言も話そうとしなかった石田が口を開いた。



「・・・まぁ、それが無難なとこやな。」

「行った先で何あるかわからんけど、行き先に間違いはないやろ。」

「ほな、金太郎、広瀬んとこ行ってさりげな〜く聞いて来い。」

「なんて聞くん?」

「どっか行きたいとこないか、って。」

「それ、さりげなないやろ。」

「けど、金太郎にさりげなくとか無理やろ。」

「・・・せやな。」

「直球勝負が金太郎らしくて、えぇんちゃう。」

「ほな―――」


ドゴンッ!!


「みんな、おおきにな〜!!!」

「はやっ!?」

「それはえぇけど、部室のドア壊して行ったで。」

「戻ってきたら、修理させよか。」



戻ってきたらな、と白石が静かに笑う。

もう部活も終わって帰るだけというこの時間だ。

あれだけ慌ただしく出て行ったというのに、金太郎のラケットは部室には残っていない。

そのまま一緒に帰る気なんだろうと、他の部員たちも苦笑いを浮かべる。



「とりあえず、ドア直さな帰れんで。」



ため息混じりの忍足の言葉に、他の部員たちはしぶしぶといった態で壊れたドアへと手を伸ばしたのだった。











*****







「静!!」

「金太郎くん。もう帰る準備できた?」

「もちろんや!」

「それじゃ、帰ろうか。」

「ワイ、静に聞きたいことあんねん!」

「へ?今?」

「今!」

「え、っと、何かな?」

「ワイ、静とデートしたいねんけど、静どこ行きたい?」

「デ、デート!?」

「なぁなぁ、どこ行きたい?」

「どこ、って・・・」

「ワイ、どこ行ったら静喜ぶかわからんから。なぁ、どこ行きたい?なぁなぁ!」

「ちょ、ちょっと待って!」

「どこ行きたい? なぁ!?」

「ちょっと待って!ねっ?」

「・・・静は、ワイとデートしたないんか?」

「そ、そんなことないよ!」

「ほな、どこ行きたい?」

「え、っと・・・」

「なぁなぁ。」

「え〜〜〜〜っと・・・」

「なぁ、まだ?」

「あ、明日まで待ってもらってもいいかな?」

「え〜〜〜!? ワイ、はよ行きたい!」

「早くって言っても学校あるし、部活もあるし・・・日は次の日曜日とかどうかな?」

「大丈夫や!」

「なら、日曜日に・・・デ、デートすること決定で、行くところはそれまでに私が考えるってことでどうかな?」

「・・・了解や!」

「ふふっ。 楽しみだね。」

「ワイも! めっちゃ楽しみやで!!」

























2000hit キリリクで金太郎×静でした。

金太郎は初チャレンジでしたが、楽しく書かせていただきました〜。笑

こちらは、リクエストくださった方のみ
お持ち帰り可能となっております。
リクエスト、ありがとうございました!!

2009/10/19


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