Lovingly...
不満、なんてあるわけない。
大好きな先輩が隣にいて、
その先輩が私の彼氏、なんだもん。
不満なんて、あるわけないのに・・・
「静。」
低い声で、そう呼ばれるのが好き。
他の誰を呼ぶ時とも違う。
私にだけ優しく聞こえるのは、気のせいじゃないと思うから。
ぎゅっと、
握ってくれる、大きな手が好き。
あたたかくてドキドキもするけど、包みこまれるようで、すごく幸せに感じるから。
毎日毎日、幸せで。
不満なんて、あるはずないのに。
あってはいけないのに・・・
「先輩・・・」
重ねた手をぎゅっと握る。
歩みを止めれば、どうかしたか?と先輩が顔を覗き込んでくる。
「私、弦一郎先輩が大好き、なんです。」
想いを告げる。
「だから・・・」
触れてもいいですか?
なんて、恥ずかしくて言えるはずもないから―――
爪先を立てて、
突然の告白に驚いた表情を見せる先輩と距離をつめる。
反射的に後ろへ下がろうとする先輩を追いかけると、
強引に唇を重ねた。
そっと離れると、目を大きく見開いて微動だにしない弦一郎先輩。
自分の唇に指先で触れる。
何だかキスというよりも、押し付けた様な感じが強くて・・・
(恰好、悪いな・・・)
先輩の方をもう一度見ると、まだ動かない先輩。
呆れられたのかな・・・
たるんどる!って怒られちゃうかな。
「あの・・・先輩・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
「お、怒って、ますか?」
理由を聞かれたらどうしよう。
触れたくなった、って言ったら嫌われちゃうかもしれない。
「あの・・・すみませんでした!!」
「・・・静?」
「わ、私! どうかしてたんです! 今のままで十分なのに、もっと先輩と近付きたいって思っちゃって―――」
「なっ!?」
「すみませんでした! 私、今日はここで失礼しますっ!!」
「―――待てっ!!」
踵を返して走り去ろうとしたところを、腕をとられる。
ぐいっと腕が引かれて、身体ごと包みこまれるように抱きしめられた。
「・・・・・・・はない。」
先輩の腕の中で声が聞き取り辛くて顔を上げれば、思っていたよりも近い距離に先輩の顔。
「静が、謝る必要はない。」
「でも―――っ!?」
まるでスローモーションを見ているみたいに、弦一郎先輩との距離が縮まる。
「謝るとすれば、俺の・・・方、だ。」
顎をとらえられ、顔を固定される。
何か言おうとした言葉は声にならず、
少し鼻先をずらして近付く先輩の唇に飲み込まれる。
押し付けただけのさっきとはまるで違う。
キスは、唇を重ねるということは、こういう事なんだ、と。
どこか冷静な頭で理解して。
けれど、それは長くは保たなかった。
「―――んっ」
触れては、離れて。
また、離れては、触れて。
何度も何度も繰り返して。
次第に、心が満たされていくのが分かる。
触れる度に、好きだという気持ちが溢れてくる。
言葉じゃなく、触れ合うことで想いが伝わるなんて知らなかった。
触れ合うことが、こんな幸せなことだなんて、初めて知った。
「すまないっ!」
「何故先輩が謝るんですか?」
「いやっ、その・・・な、何度も、だな・・・」
「私からしたのに?」
「し、しかし・・・」
「私、ちっとも嫌じゃありませんでした。 むしろ嬉しかったんですよ?」
「いや、だが―――」
「先輩に謝られてしまうと、さっきのこと自体を否定されたみたいで、なんだかイヤ・・・なんです。」
先輩の制服の肩口を引っ張る。
「先輩が好きだから、触れたかったんです。」
先輩が少し身をかがめたところを狙って背伸びをして、そっと唇を重ねれば、
「静、頼むから煽らないでくれ。 これ以上は謝っただけでは済まなくなりそうだ・・・」
腕を捕られ、ぎゅうと力いっぱい抱きしめられた。
12345hit キリリクで真田×静でした。
押せ押せ(?)な静ちゃんと何かがぷっつりと切れてしまう副部長でした〜。笑
こちらは、リクエストくださった方のみ
お持ち帰り可能となっております。
アミティーさま、リクエストありがとうございました!!
2010/01/28