きっといる 年末年始企画
「葵先輩っ!!先輩サンタさんに何お願いしたんスか!?」
「……は?」
顔を綻ばせてキラキラした目でこちらを見つめる可愛い可愛い後輩に、思わず固まった。
(あー…、確か柳が赤也はサンタさん信じてるって言ってたっけ)
「え、っとねー…」
「はい!!」
「あ!葵やん!何の話しとるん!?」
どうしようかと視線を逸らしていると、金ちゃんが会話に飛び込んできた。
「サンタさんに何を頼んだかって話してるんだよ。遠山は何をお願いしたんだ?」
(おお、金ちゃんなら話もあうでしょう!!このまま私を流して2人で盛り上がってもらおう!!)
と、思っていたのにだ。
「兄ちゃん何言うとるん?サンタなんておらんでー?」
このゴンタクレルーキーは無邪気に爆弾を落としてくれた。
「き、金ちゃん!?」
「何言ってるんだよ?サンタさんがいねえわけないだろ」
「おらんもん。ちっちゃい頃オカンがサンタなんておらん言うたし」
まさかだよ、なぜ君は毒手は信じてサンタさんを信じてないんだよ。誰がこんな展開を予想できたの…!!
「き、金ちゃん…?サ、サンタさんはきっといるんじゃないかなあ…?」
「ちゃうでー?よそのサンタはオトンでな、うちはそんな面倒臭いことせんって言われてん!」
シビアな…!!何それ、その考え方は関西人ならではなの!?
「そ、そんなわけねえだろ!!サンタさんはいる!!嘘つくんじゃねえ!!」
「おらんもん。嘘なんてつかんで!!なあ葵?嘘ついたら閻魔様に舌引っこ抜かれるもんな!!」
「葵先輩!!」
「え、えっと、えっとね…」
金ちゃん…なぜ閻魔様はいてサンタさんはいないの…!!そんな真剣な目で見ないで!!赤也もそんな泣きそうな目で見ないで…!!
「えー…っと、あれだよ。サンタさんってそんなに大勢いないからさ、日本は関東限定だって聞いたことがあるなあ…」
「え?ホントッスか!?」
「そ、そうなの。だからサンタさんを羨ましがる子のために、他の地域では家族の人がサンタさんの真似するんだって」
「そうやったんかー!!」
「だから、関東にはサンタさんいるし、関西にはいないんだよ。赤也も金ちゃんも嘘はついてないよ、ね?」
ほー、と納得して嬉しそうな2人を見て心の中で安堵の溜め息をつく。
2人がサンタについて語りながら去って行って今度は本当に深い溜め息をつくと、背後から笑い声が聞こえた。
「フッ、その発想はなかったな」
「すまんなあ芦原さん、うちの金ちゃんが話ややこしゅうして」
「あんたら…見てたんなら助けなさいよ…!!」
心底可笑しそうな柳と苦笑しながらも反省する気のない白石を思いっ切り睨みつける。
「あんたら後輩の教育どうなってんのよ…!」
「サンタは管轄外やろ」
「赤也はお前の後輩でもあるだろう」
何を言っても意味がないことを悟り、もういいよとうなだれる。
「関東にはサンタが来るのか。ではもし俺の所に来なかった場合は葵からプレゼントでも貰おうか」
「あ、ええなあ柳君。芦原さん俺んとこにも来てや」
「誰がやるか、誰が行くか」
私の声なんて聞かずに私から何を貰うかなんて話をしながら2人は盛り上がっていた。
「…もうクリスマスなんて知らない」
サンタさん、私に優しくしてくれる人が欲しいです。