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「広……」




新しく住まうことになった俺の部屋は、剛と使っていた前の部屋の二倍くらいの広さがある。…気がする。

二人で使っていたあの部屋でも充分な広さだと思っていたのに、それの二倍となるとなんだか落ち着かない。


「これ、差別とか言われないのかなあー…?」



生徒会とはそこまですごいもんなのか。
同じ学費でこんな差、俺が親なら怒るかもな。


そんな年寄り臭いことを考えてしまった。





「んー……腹減った…けど、どうしよ」

部屋に一人となると、演じる必要も無いのか。
口調を切り替えて、大きなソファの端っこに腰を下ろした。


休日の寮は、暇である。
スーパーや日用品を取り扱う店はあっても、ゲーセンなどの娯楽施設やブティック系はない。

まあでも、外出許可を申し出れば回数に制限はあるが外出も出来る。


あいにく俺はアクティブには程遠いし、会いに行く恋人もいない。

近いうちに剛と街に出る約束はしたけれど、それだけだ。


我ながら、ちょっと寂しいよな。



「剛と…食堂行くか……」


食堂は出来るかぎり使わないでいようと思ってはいるけれど、やっぱり美味しいものは食べたい。

スーパーの惣菜より、食堂の暖かいおかずの方がいいのは、当たり前。



沢山の人目に触れるだろうことも考え、ジャージからラフめな私服に着替える。


剛の新しい部屋に向かい、チャイムを鳴らした。



「怜、どーした?」


「ね、ね、お腹空かない?何か食べにいこーよ」



俺がそういうと剛も分かった、とキーを取りにいった。
その間、そろりと中を窺ったけれど、やはり俺と同じように広い部屋。



「広いって、こんなに落ち着かないと思わなかった。どこにいればいいのか分かんねぇ」


「俺もそう思ったよぉ」



食堂に向かう間、剛と広い部屋について愚痴を言い合う。
羨ましがるやつもいるだろうが、俺と剛は感性が近いのか、同じようなことを思うことが多くある。



「やっぱり俺、剛と同じ部屋がいーよー……」

「まあ、朝起きる練習になるんじゃないか?」

「あーっ、剛ひどぉいー!」

「だって本当のことだろ」


俺の深い眠りの前には、目覚ましなんて意味を成さないんだから仕方ないだろ。
痛いところを剛に指摘され、すこしムッとすれば、剛に笑われてしまった。





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