2
「広……」
新しく住まうことになった俺の部屋は、剛と使っていた前の部屋の二倍くらいの広さがある。…気がする。
二人で使っていたあの部屋でも充分な広さだと思っていたのに、それの二倍となるとなんだか落ち着かない。
「これ、差別とか言われないのかなあー…?」
生徒会とはそこまですごいもんなのか。
同じ学費でこんな差、俺が親なら怒るかもな。
そんな年寄り臭いことを考えてしまった。
「んー……腹減った…けど、どうしよ」
部屋に一人となると、演じる必要も無いのか。
口調を切り替えて、大きなソファの端っこに腰を下ろした。
休日の寮は、暇である。
スーパーや日用品を取り扱う店はあっても、ゲーセンなどの娯楽施設やブティック系はない。
まあでも、外出許可を申し出れば回数に制限はあるが外出も出来る。
あいにく俺はアクティブには程遠いし、会いに行く恋人もいない。
近いうちに剛と街に出る約束はしたけれど、それだけだ。
我ながら、ちょっと寂しいよな。
「剛と…食堂行くか……」
食堂は出来るかぎり使わないでいようと思ってはいるけれど、やっぱり美味しいものは食べたい。
スーパーの惣菜より、食堂の暖かいおかずの方がいいのは、当たり前。
沢山の人目に触れるだろうことも考え、ジャージからラフめな私服に着替える。
剛の新しい部屋に向かい、チャイムを鳴らした。
「怜、どーした?」
「ね、ね、お腹空かない?何か食べにいこーよ」
俺がそういうと剛も分かった、とキーを取りにいった。
その間、そろりと中を窺ったけれど、やはり俺と同じように広い部屋。
「広いって、こんなに落ち着かないと思わなかった。どこにいればいいのか分かんねぇ」
「俺もそう思ったよぉ」
食堂に向かう間、剛と広い部屋について愚痴を言い合う。
羨ましがるやつもいるだろうが、俺と剛は感性が近いのか、同じようなことを思うことが多くある。
「やっぱり俺、剛と同じ部屋がいーよー……」
「まあ、朝起きる練習になるんじゃないか?」
「あーっ、剛ひどぉいー!」
「だって本当のことだろ」
俺の深い眠りの前には、目覚ましなんて意味を成さないんだから仕方ないだろ。
痛いところを剛に指摘され、すこしムッとすれば、剛に笑われてしまった。
[ 55/150 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
[戻る]