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「じゃあなんで、疲れるって分かってても続けるわけ?」


「んー……別にそんな深い訳はないんだけどね」


はは、と笑えば剛は納得していないような顔で俺を見る。
なんだか怒っているようにも取れる表情で、


「疲れるけど、楽で安心するんだよねー…」


「安心?」


「そー。自分でもよく分からないんだけどねぇ」


誰か一人に盲目的に尽くすのと、誰これ構わず皆と親しくするのは、どちらが良いことなのか。


居場所は多い方がいいだろ?

いくら献身的に尽くしても、同じだけ尽くされなければ損だと思ってしまう俺は駄目なやつ?

思わず自嘲するように笑ってしまうと、剛の眉間にシワが寄った。


「怜がなに考えてるか、イマイチ分かんないんだけど」

「そーぉ?」


「………ま、俺も所詮お前に愛想売られて浮かれてた一人だった訳か」


「へ……?」


俺を見ずボソリと呟いた剛の言葉は俺の耳に上手く届かなかった。


「剛、今なん………」

「なんでもない」


ビクリ。
俺の言葉を遮って言われた言葉は酷く冷たいもので。
思わず足を止めてしまう。


「あ、ゴメン………」


しかしそれも一瞬で、次に発せられた言葉は酷く焦ったものだった。

「…いや、こっちこそゴメン。さっきの忘れてー!」

動揺を取り繕うように明るく振る舞い「変なこと言ってごめんねー。教室いこ?」と声をかけたが、剛はおう、と呟いて何だか寂しそうに笑った。

俺は何か、剛を傷つけるような言葉を言ってしまったのだろうか。
無言で俺の横を歩く剛を盗みみれば、その顔は無表情。

聡い剛は、俺が何かを隠しごまかしているのが分かってイライラしたのかもしれない。


ちょっと剛に甘えすぎてたか、な。
剛が俺を甘やかしてくれるから。



その後の昼休みも剛は俺に何事もなかったかのように振る舞い、いつもと変わらなかったけれど。

普段なら何度も俺の頭をぐしゃる剛の手が俺に伸びて来ることはなかった。





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