大人と子供の狭間にいた | ナノ
大人と子供の狭間にいた



獄寺×京子



何か、とてつもなく恐ろしいものだと思っていた。大人になる為の一つの重い扉だと思っていた。

けど違った。それは子供染みた妄想に過ぎない。子供の戯れに近いものを大人の戯れだと思い込む私は子供だった。


「隼人君、」

恋人の名前を唇の先で呟いてみて、隣りで眠る彼の頬を優しく撫でた。触れ合う肌が心地良い。
少し汗ばんだ背中をゆっくりと撫でる。胸元に顔を埋めれば、彼の腕に抱きすくめられた。

ねえ、私達は大人になったのかな

心の中で彼に問い掛けてみる。彼は大人が嫌いだと言う。私にはよく分からない。どこからが大人なのだろうか。どこまでが子供なのだろうか。

私は処女じゃなくなった。女になった。それが大人になったということだろうか。そうかといって次の日から劇的な変化というのは無い。いつもと変わらない日々が待っている。

きっと気が付いたら私は大人になっているんだろう。

「京子、」

彼の唇が微かに動いて私の名前を呼んだ。愛しく思えて髪を優しく撫でて、口の端にキスをする。


今の私達は、大人でも子供でもなかった。



end




110219
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