僕は明日死ぬから | ナノ
僕は明日死ぬから



六道×獄寺 カニバリズム



僕は明日死ぬ。だから僕の最後の言葉を書き記しておきたい。
僕の一番愛した人のことを、ここに。立てられなかった墓をここに。

獄寺隼人は二十六歳の時、僕と任務を任された。偶然にも任務が立て込んでいて、二人で任務をこなすのは厳しい状況にあったが、それを引き受けた。あの頃、彼を愛していたが故にその任務を何とかこなして生きて帰ろうと思った。今まで生きて帰ろうと思ったことなんてなかったのに。
任務は予想を上回るほど過酷で、敵が倒しても、倒しても尽きない程だった。出来る限りのことを尽くして必死になっている中で、気付かないうちに彼は倒れていた。敵の誰かにやられた。僕がそうと分かった時、わけが分からなくなった。生きていて、人の儚さを痛いほど知った。
一人で敵を殲滅して、彼を抱きかかえれば体はほんの少しだけ熱が残っていた。もう脈も止まり、呼吸もない。どうしようもなかった。死んだ人間は元には戻らない。自分の使う幻術さえも無力だ。抱きかかえたまま僕は自分の部屋に帰った。
彼は、この任務で死に、そして行方が分からなくなった、とボンゴレでは認識された。死体はどこにもなくなってしまった。
でもそれは間違いだ。死体がなくなる筈はない。沢田綱吉もそれをよく分かっていた故に探すのに尽力を尽くした。でも見付からない。そう、見付かる筈がない。

僕が食べてしまったのだから。

家に連れて帰って僕は彼をどうしようかと考えた末に、食べた。愛しくて、愛しくて、一つになりたくて。その思いだけが頭の中を巡り、血が騒いだ。彼を求めているのだと。

喰らいつくし舐めつくされた後の骨は、僕が箱にしまった。そして鍵をかけた。
それがあるからこそ僕は生きてきたけれど、もう生きていても無意味だと分かった。だから明日、僕は死ぬ。下らないこの人生に終止符を打つ。それでも廻り廻って、笑っている彼に会うことが、あるのだろうか。

この部屋の真ん中に僕は愛した人の骨を入れた箱を置く。
その上にこの手紙を置く。



そして僕は、



end




100903
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