山本×獄寺 海斗さまへ 獄寺が朝から風呂に入ろうと言い出した。俺の家では朝風呂は贅沢だなんだと言われて入る事が無かったからどきどきしながら一緒に朝風呂に入る事にした。獄寺はとても慣れた様子であひるさんとタオルと俺を連れて風呂に入った。シャワーをざっと浴びてから浴槽に浸かる。二人で浸かるからお湯のかさが上がって、ちょっとお湯が溢れた。 「獄寺はよく朝に風呂入んの、」 「んー…まあな」 「へえ……ちょっとかっけぇなあ…」 まだ朝だから眠そうな獄寺を見詰める。寝起きの腫れぼったい目。ぼんやりと浴槽に浮かぶあひるさんを見詰めていた。 「あひるさん可愛いのな」 「だよなあ」 獄寺は小さく笑って指先であひるさんを撫でていた。あひるさんが羨ましい。何より獄寺が可愛い。 「獄寺のが可愛い」 「んー…、あひるさんのが可愛いっつうの」 「そうか、」 「あひるさん侮辱すんじゃねぇよ」 唇を尖らせて眉を寄せる。あひるさんを抱き寄せて俺に背を向ける。出来れば俺があひるさんになりたい。というかあひるさんを侮辱したつもりはない。だって俺もあひるさん好きだし。 「ごくでら」 「…」 「だいすき」 言う事が無くなったら、俺はこう言う。一刻一刻浮かび上がる気持ちを口にしなくて後悔するより、口にした方が良いって思う。 暫く獄寺の白い背中を眺めてたら不意に振り向いて悪戯な笑顔を浮かべたと思った瞬間、俺はあひるさんとキスしていた。獄寺はあひるさんを離すと俺にキスをしてきた。あひるさんには申し訳ないけど、やっぱり獄寺のキスのが好きだな、なんて唇を重ねながら。 「俺も、」 「ん、」 「好き」 ぎゅっと抱き締められる。肌と肌が触れ合って、ぺたぺたして、何だか蜥蜴にでもなった気分だ。 沢山キスして満足したのか獄寺は俺の腕を引っ張った。 「出るぞ」 「ん、そうすっか」 脱衣室で大きくて真っ白でふわふわしてて、でもちょっとくしゃりとしたタオルで体をくるむ。多分獄寺が洗ったんだろうな。獄寺の匂いがする。ちょっと苦くて甘い匂い。 「獄寺、あひるさんは、」 「ん、風呂で泳いでる」 「連れて来ねぇの、」 獄寺は風呂場の方をちらりと見て、ちょっと笑った。 「いいんだよ」 「そうなのか、」 「…二人きりが良いだろ、」 獄寺の一言にどきりとする。いやらしい笑顔をちょっと浮かべたその顔にキスをした。 「そうだな」 もう一回キスしてリビングに行く。 こうして幸せな朝を俺等は迎えた。 獄寺が夜ベッドの中で呟いた。 「あひるさん持ってくんの、面倒だったんだよな…」 end 090406 main |