山獄前提 獄寺×雲雀 「へっ、馬鹿だろ、お前。武が振り向くとでも思ってんのかよ」 端正な表情が意地悪く歪む。獄寺隼人を呼び出した自分が愚かだった。僕は山本武が好きで好きで仕方が無かった。でも山本は振り向かない。なんせ獄寺に一途であったから。普段山本に素っ気無い獄寺なら山本をフってくれるかもしれないなんて小さな希望を持って言ったが無駄だった。獄寺はどれだけ自分が山本からの好意を一身に受け止めているかをよく分かっていた。無駄に利口な奴。憎い。 「お前が、武に愛される日なんて来ねぇ。未来予知なんて出来ねぇ俺でさえ分かる未来だ」 「…っ」 「武は俺しか見てねぇ。分かるだろ、お前が一番。俺以上に分かってんだろうな。可哀想な風紀委員長」 直視したくない事実を突き付けられて目眩すら起こしそうだ。銀髪がさらりと揺れる。その銀髪が山本を誘惑し、整ったその唇が山本に愛を囁き、翠色のその目が山本を射止める。憎かった。 「籠の中の雲雀、愛を知らず、なんてな。…山本にもし愛されんならどうされたい、」 獄寺は僕を真っ直ぐに見る。 「触れられてさ」 白い指先が頬に触れる。 「唇撫でられて」 何かを塗り付けるみたいに唇を撫でられた。 「キスされてさ」 体が強張る。一番憎い奴に唇を奪われるなんて。 「犯される、か」 空気の流れが止まる。 時計の針が止まる。 視界が反転した。 獄寺隼人に犯された。身体中が痛くて動けない。心も痛くて呼吸が苦しい。絶頂まで連れていかれた事が悔しかった。獄寺は倒れたままの俺を見て笑って応接室から去って行った。 獄寺はああいう奴だ。 気付いてよ、山本。 呟きはあまりに虚しくて、天井が涙に歪んだ。 end 090821 main |