誤魔化せない | ナノ
誤魔化せない



山本×獄寺



夕方の教室で十代目をお待ちしていた。補習があるから先に帰っててと言われたものの、帰るに帰れずに教室で待っていた。隣りで山本が野球漫画を読んでいた。俺は一人で図書室からパクってきた本を読んでいた。本は大して面白くない。

「ツナ遅ぇな」

山本が漫画を読みながら言う。確かにいつもより遅い。時計の針は五時半を回る。空も夕方らしくなってきた。

「教室の電気点けろよ」

「無理、今良いとこだから」

日は沈んでいくばかりだ。教室は段々と暗くなっていく。文字が読みにくくなってきて、眼鏡をかけた。

「眼鏡似合うな」

山本は漸く読み終えて漫画をバッグにしまった。退屈そうに相手を見るなり指で丸を作って目元に宛てる。

「色眼鏡か」

「指眼鏡なのな」

無邪気に笑う。何が見えるのかと聞いてみた。山本は少しの間黙っていた。やがて口を開く。

「獄寺だけ」

「机とか椅子とかは、」

「見えない」

「バカだな」

「そうだな」

山本は指眼鏡を取って笑みを浮かべる。空はどんどん暗くなっていく。今まで見たことないような色をしている。

「俺、獄寺バカだと思う」

「…は?」

「獄寺大好き」

俺は思わず本を山本に投げ付けた。顔が熱い。こういう時に限って夕日は沈んで誤魔化せない。

「あ、獄寺君と山本」

「じゅ、十代目っ」

「お、ツナ」

山本は獄寺と仲良ししてたのなと嬉しそうに言う。十代目も嬉しそうに笑う。俺は顔の赤らみが引かない。

「獄寺君、顔赤いよ、」

「気のせいですっ」

「山本のせいか」

「はははっ」

「えっ」



end





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