ダンボール箱に詰めたもの | ナノ
ダンボール箱に詰めたもの



獄寺の話 十年後



俺はまた、引っ越しをすることにした。三年いれば長い方だ。このマンションともお別れ。そういうことにした。
持っているものは少ないから、ダンボール箱に詰めるのは簡単だった。溜まっていた雑誌は捨てた。もう何のメモだか忘れた紙片も捨てた。懐かしいと感じるものはあまり傍に置いておきたくない。未練がましく生きるなんてごめんだ。

殺風景になった部屋を見渡す。俺も空っぽになった気がする。世界に一人な気がした。
ふと、まだしまっていなかったものに気が付いた。
壁に貼ってあった中学生の頃の写真。十代目、山本、俺が写されている。幸せそうに、嬉しそうに笑っている。懐かしい思いが沸いてきて、涙が溢れた。

家のドアが開く音がした。

「獄寺、手伝いに来たぜ」

山本の声。写真を急いでダンボールに詰めた。涙を拭う。

「あれ、獄寺…泣いて…」

「泣いてねぇよ」

俺の中には幸せな過去と今があって、一人にさせてくれない仲間がいた。



end





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