酷いのはどっちだ | ナノ
酷いのはどっちだ



山本←獄寺 R15



獄寺の白い指先が太股を撫でる。指先から電気でも流れてるみたいに触れた場所から徐々に痺れていく。其のもどかしくも溺れてしまいそうな感覚に、俺は抵抗をしてみる。腕は椅子の後ろで縛られていて抵抗も虚しく終わった。何をされるかも分からない中、俺は不安が渦巻いている。獄寺は静かに怒っている様な、静かに悲しんでいる様な、曖昧で深い表情をしていた。

「ごくでら…、」

「…てめぇは黙ってろ」

低い声が部屋に響く。今、俺は獄寺の部屋にいた。何を話していたか、突然こうされていた。抵抗する手段はあったといえばあったが、呆気にとられて何も出来なかったんだ。
獄寺の指はジッパーを下ろして、もう既に勃っている俺の自身を取り出す。この時、初めて屈折し、動く指に不自然さと奇妙さを覚えた。獄寺の微かに震える唇が俺の自身に口付ける。体がぶるりと震えた。

「ごく、でらっ…」

「…んっ」

獄寺は自身を咥える。苦しげな表情をして。こんな行為、友人同士じゃ、いけないと頭の片隅で思っている。でも、獄寺の、其の苦しげな表情を見て何も言えなくなる。この表情が、何処か好きだと思えた。舌先で弄ばれる。余裕は次第に失せていく。其れはお互い様だった。

「なん、で…こんなこと…」

俺の一つの問い掛けに獄寺はぴくりと反応する。それでも行為は止めずにいた。俺は、天井に目を向ける。真っ白な天井がぐにゃりと歪んでいるように思えた。意識が下にばかりいくのが分かり、俺は唇を噛んだ。熱い息を吐いて獄寺を見ると、獄寺は泣いていた。俺の心臓に針が刺されたみたいに痛んだ。でもそんな小さな痛みも俺の中では消えてしまう。

「…なんで、泣いてんだよ…、」

「…ぅ、く…きらい、だか、らだ…」

途切れ途切れに言うと裏筋を舐める獄寺。びくりと跳ねる体。思わず吐き出された白濁。獄寺の顔に掛かる。涙と白濁にぐちゃぐちゃの獄寺。

「…すき、だから…っ…好き、だから…」

涙にまみれた声が静か過ぎる部屋に響いた。ぼろぼろと涙が床に落ちる。俺は獄寺を見つめた。目を、静かに瞑る。俺にはどうでも良かった。兎にも角にも、俺は椅子の後ろで縛られた腕を、解放して欲しかった。



end





090117
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