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山本×獄寺

カメさまから



報われないのが当たり前。大事だけれど別に多くは求めないし与えない。
オレの考えかたはどこか冷めていて、欲がなく、生きてくのがヘタだった。

今もそうだ。
好きだと思っても、傍にいれれば、否、もう見てるだけでいい。
そういう些細な幸せ、自分が確立するイメージのままのひとで居てほしい脅え。
オレは簡単にいえば恋愛に頓着がないのかもしれない。
だからこうしてる今だってオレははんぶんどうだっていいのだ。

「好きなやつがさーできたんだって」
「ふーん。」
「告ってきたのあっちだったのに」
「告白したからってずっと相手が好きな保障ないだろう」
「ひでー」

今日山本は初めての彼女にフラれた。
まあフラれるのはうなずける、だって彼女なんてコイツの中では3番以内にもはいらないのだ。
野球、友達、家族、マフィアごっこ。これらのものに勝てないと山本の1番にはなれない。
そのためには強い忍耐力や愛情が必要なのだ。
落ち込んでても明日になったらきっとケロッとしてて、恋愛なんて半分しかしてない。
オレとはまた種類が違うけど山本だって恋愛がヘタクソだ。


「で、なんでオレに云うの」
「だって獄寺に話したかったから」
「めーわく」

オレはやまもとが、好きで。
彼女がいることもそういう下世話な話もするからいまさら、なんだけれど。
やっぱり目をつぶってみないようにする心の奥はズキズキきしむ。

「慰めるくらい」
「いやなこった、」
「もう女なんてこりごりだぜ、」

そんなことをたやすく云うものじゃない。
イライラする、焦燥感が電流みたいにビリビリに流れてくる。
ああ云いたいわけじゃないのに、口からこぼれそうになる、言葉の数々。

踏み込んではいけない、求めたいわけじゃない、こいつとはこのままでいたい。

うじうじ悩んでんなよ、彼女なんかはやく作ればいい。
オレのとこになんか来るんじゃねえ、そんなのひでぇじゃねーか。

「本当に女は嫌なのか、」
「へ?」
「じゃあ、オレにしとけよ」

(オレならお前を愛してあげるのに!)

もう後戻りはできない、いいわけもできたけど、逃げたくはなかった。

「ごくでらはオレを大事にしてくれんの?」

そういって笑うと唇がふれた。
つくづく適当な男だと思った。

「じゃなきゃ云わねぇよ、」

だってオレは本当に求めていたわけじゃなかった、こんな幸せを



end





090210
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