企画アイリスさまへ 獄寺←京子 目を開けたら、真っ白な天井が映った。次にクリーム色のカーテン。保健室だ。次に目に入ったのは獄寺君だった。 「目、醒めたか」 「…あ、うん」 そういえば男子が体育をやっているのを見た時に獄寺君の蹴ったサッカーボールが思いっきり頭に当たったんだっけ。それで、 「悪かったな」 獄寺君はすまなそうに俯いた。私は獄寺君が好きで、今もそれを言えずにいる。目の前で獄寺君を目にして心拍数が上がった。もしかしたらここまで運んでくれたのかもしれない。酷く嬉しい気分になるのも束の間、片思いであるのを思い出して胸がちくりと痛かった。 「…もう大丈夫か」 「うん、大丈夫。…ごめんね、私が避けさえ出来れば…」 「いや、俺のコントロールが悪かった…力が二割くらい入り過ぎてた」 獄寺君はボールがぶつかった私の頭を指輪だらけの手で撫でた。凄く優しくて、思わず顔が熱くなった。その手にそっと触れてみる。獄寺君は少し驚いた様子を見せた。引きそうになる手を握った。 「獄寺君、」 心拍数が上がる。 「あのね、」 指先から麻痺しそう。 「私、獄寺君が好きなの」 一気に口にした。涙が出そう。獄寺君は私から目線を逸らした。切羽詰まったみたいな表情を浮かべている。私は獄寺君を苦しめているの、 「…ありがと」 獄寺君は苦しそうな笑顔を見せて、私の髪をするりと撫でてカーテンの向こうに行った。 「おい、隼人、あの子を泣かせるつもりか」 カーテン越しに保健室の先生がいる事に気付いた。獄寺君が保健室から出ていこうとする足音が止まる。私は思わずカーテンに手を掛けた。 「…シャマル、お前なら分かるだろ。……俺には過ぎた奴だ」 カーテンを開けた時、最後に見たのは獄寺君が泣きそうな顔して笑って、背中を向けたところだった。泣きたくなった。涙が浮かぶ。嘘でも良いから、獄寺君に愛されたかった。 「…分かってやってくれ、アイツにも抱えてるもんがあるんだよ。……それにまだ諦めるには早いぞ」 先生は獄寺君が出ていった保健室のドアを見つめながら苦笑した。 私はベッドに倒れてみる。白い天井、クリーム色のカーテン…。獄寺君、 end 090520 main |