抱き締めて、キスして | ナノ
抱き締めて、キスして



ディーノ×獄寺

Al mio caro...『Ti amo』さまに提出



ストレートに言おう。

俺はディーノが好きだ。

あんなへなちょこって思っていたのに…、



同居を始めて一ヶ月が過ぎた。広い此の部屋にももう慣れた。其れに一人で居るのにも慣れた。
ディーノと同居と言っても、ディーノが一ヶ月で此の部屋に戻ってきた日数は十日程。
大きなベッドで一人で寝るのも最初は何となく寂しかったけど慣れたし…、
でもディーノの帰りを待つ習慣は直らない。


今夜も俺は一人、ディーノを待っていた。
でも一向に帰ってくる気配は無かった。

べランダに出て一服する事にした。吐かれた紫煙が夜空に溶けていく。
今日は満月で明るい夜だった。


待ち草臥れてベッドに仰向けになった。

待ったって来ないものは来ないのだから…、

仕方ないのに…


ディーノを待つ自分が馬鹿らしくなってきた。彼奴を好きになった俺が馬鹿なのか…、

ニヒルな笑みが浮かんでくると、俺は其のまま眠りに落ちた。



溺れそうになる此の匂い。
鼻孔を擽る。
ベッドが片方に掛かる重みに微かな悲鳴を上げている。

きしり…

「ディーノ…、」

隣にはずっと待っていたディーノがいた。琥珀の瞳に己が映る。寝惚けた顔。

「本当に…ディーノ、」

「あぁ、ごめんな。遅くなって」

漸く、五日振りの今日に会えた。
心臓がとくとくと音を立てる。

「キスして、」

自然と溢れる言葉。
誰も触れていなかった唇に唇が重なる。久し振りの感覚に微かに躯が震えた。

「抱きしめて、」

我儘過ぎる自分が奥から這い出て来た。ディーノの前にだけ出てくる狡い奴。

抱き締められて躯が温もりに包まれる。

何時離れてしまうかもしれない温もりに俺は安心してしまって、微かに涙が零れた。



end





080618
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