山本×獄寺 楊柳さまへ 俺は山本と付き合い始めて一年が立つ今日という日をしっかり覚えていた。山本も何も言わないが覚えているに違いない。俺は一周年だし何か特別な事がしたいと考えた。そこで思い付いたのが、やっぱりデートだ。ここ最近一緒にコンビニ行く程度でデートなんかしていない。俺はまだ眠っている山本を起こした。 「山本、デートしよ」 「…今日部活…」 寝惚け眼でこちらを見た山本が口にした言葉は絶望的なものだった。俺は一瞬言葉を失い唾を飲み込む。部活に行って帰ってきてから夜にデートみたいなことは出来ない。何故なら山本は部活から帰ったら疲れて寝てしまうからだ。 「や、休めねぇのか…」 「…練習試合」 「………」 「…午後からだから」 俺は山本の一言で思考をフルに巡らせる午前中で出来る事は無いだろうかと考える。そうしているうちに山本がむくりと起きた。 「室内デートしよっか」 パジャマを着たままで眠そうな山本が俺に笑い掛けた。 「室内、デート…、」 「獄寺、ちょっと待ってて。準備するから後ろ向いててな。あと俺着替えるから」 俺は不思議に思いながら、ばたばたとする背後に首を傾げた。室内デートって一体何をするんだ。室内デートって何か違うんじゃないか。 「で、出来たーッ」 俺は振り向いた。部屋の構造というか置いてある物の位置が変化している。俺の飼っている金魚とか色々動いていた。山本もパジャマからラフだけどお洒落な格好に着替えていた。俺の隣に来て手を握る。ちょっとどきりとした。 「獄寺っ、見ろよ、あそこに山が見えるっ」 「…」 山本が指した先に緑色のカーテンがある。俺はちょっと納得した。室内デートってこういうことか。 「ほんとだ、綺麗な山だな」 「それからな、ここからは海も見えるんだぜ」 「…ま、まじだ…」 山本が指した先に金魚の水槽。ゆらゆらと金魚が俺達に見られているとは知らず泳ぐ。 「見ろよ、あの綺麗な太陽。俺等を照らしてんだぜ」 「や、山本…、」 俺は山本の手をぎゅっと握ってカーテンの隙間から覗く太陽を見詰めた。山本に肩を抱かれる。こんな些細な事がこんなにも幸せに感じられるなんて。 「愛してる、獄寺」 「…俺も」 山本の腰に手を回して抱き締める。もうバカ大好き愛してる野球馬鹿。山本も俺を抱き締めてくる。鼓動まで聞こえる。 「白い砂浜に寝転がってゆっくりしよ」 山本に抱き締められながら白いベッドに倒れ込む。首筋からキスを落とされる。もう凄い幸せだ。俺最初何考えてたんだっけ。体が熱くなるだけ思考も熔けていった。 体がすっかりべとべとになるまで抱かれた。山本と一回キスをする。そういえば今日付き合って一年経つからデートしようと思って…、 「なあ獄寺、何で突然デートしたいって行ったんだ、」 「………え、」 「何で、」 「今日…、俺等付き合い始めた日だろ」 「…………ああああっ、ごめん、すっかり…」 「………」 「ごめん、許してお願い獄寺っ大好き愛してる」 てっきり覚えているのかと思っていたんだけど。 「…ったく仕方ねぇな」 「じゃあごめんねのちゅーする」 山本は済まなそうに俺を見てからもう一回キスをした。俺も馬鹿になったなあ。一年でこんなにも山本を好きになっちまったとは。 end 090531 main |