牛女 | ナノ
牛女



ランボ×リボーン 十年後



書庫は古い絵本の様な匂いが漂っている。
何処か懐かしいシナモンの様な匂いを辿りその扉を開けた。

「邪魔しに来たんなら撃つぞ」

不意に響いた声の先に本を読む少年がいた。少年だが黒色のスーツを着ている。

「なんだ、リボーンか。…何を読んでるんだい、」

15歳になる彼の隣に腰掛けた。薄い文庫本を持っている。
床にぺたりと座っている様子は少し子供らしく思えた。

「今は牛女を読んでいるんだぞ」

「………牛女、」

牛男とは自分が呼ばれるからよく聞くが、牛女は聞いた事が無い。

「お前、牛女も知らねぇのか、やっぱりアホ牛だな」

年下の奴に言われた。昔から年下の癖にリボーンは大人だ。
俺は…昔とあまり変わらない。

「…お前は変わんじゃねぇぞ」

「え、」

心を読まれた。
俺はずっと変わらないままだろうか…。

「そのまんまで良いんだぞ」

リボーンと微かに唇が重なった。
ふわりとエスプレッソの匂いが鼻腔を擽る。

「ちょっ…」

悪戯な笑みは幼い頃から変わらない。
その悪戯な笑みは何処か愛しい。

「好きだよ、リボーン」

「この牛女はな、」

あ、流された。
顔が少し赤くて可愛い。なんて言ったら撃たれそうだけど。

「大女で、力もあって心優しい女なんだ」

「うん」

白黒の服を着た優しげで大きな女を想像してみる。
奇妙だ。

「いつも黒い服を着てんだぞ」

「はぁ」

「お前とは違うんだぞ」

「わ、分かってるって」

「お前力ないだろ」

「え、や、リボーンを抱き上げられるくらいは…」

「…死ね」

思わず口が滑った。
リボーンは本を持ったまま立ち上がって書庫をすたすたと出ていく。

「ま、待ってってば、」

俺は慌てて追い掛けた。
小さな背中を見て小さく笑った。


照れ屋だな、



end





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