山本×獄寺 「十代目っ、おはようございます、」 いつも通り朝十代目の御宅に向かう。十代目は丁度家を出てきた所だ。山本も来てないみたいだしラッキーだ。 「あぁ、おはよう、獄寺君」 「はよっ、」 十代目が挨拶をされた瞬間に山本が丁度割って入って来た。俺はあからさまに舌打ちをして山本を睨んだ。山本は気にする様子を見せない。 気に食わねぇ 普通の野郎なら怯むのにこいつは違う。俺を避けようとするんじゃなくて、俺の中に入り込んでくる。 山本なんかいなくなっちまえばいい。 それで…俺は俺でいられる…。 昼、十代目は先公に仕事を頼まれたため一緒にお昼を食べられなかった。代わりにいなくてもいい山本がいた。 屋上から見える空は妙に綺麗で白い月が浮かんでいた。 「獄寺、んなに俺が嫌いか?」 妙な不快感のせいで眉間に皺を寄せて口をつぐんでいた俺に、珍しく険しい表情を浮かべた山本が声を掛けてきた。 「…わざわざ聞く程の事じゃねぇだろ」 心がざわめく。心と裏腹な答えばかり口にする事に疲れている気がした。 「獄寺…好き…」 「…」 揺れる心を手で固定したい。 好きとかそういうのはよく分からねぇ。 愛だとかんなものは俺にはいらない… 俺は冷えた心に山本が入ってくるのが恐かった。 「なぁ…」 「…ダチとか…んなもんいらねぇんだよ」 山本の言いたいこと…分かってる。 「っ…ダチとか…んなんじゃねぇよ…」 山本の困惑した表情が俺の視界に入った。んな顔させるつもりはないのに。 「…はぁ…男同士だろ?気持ちわりぃんだよ。だいたい何でオレなんだよ。余所の奴あたれ」 「ごく…でら…」 …気持ち悪くなんかねぇ。 山本のショックを受けた表情を最後に視界が揺らいだ。上を向いたら白い月がぼやけて見えた。 「獄寺…泣いて…」 「っせぇ…」 山本キスをした。初めてのキスは涙の味がした。 「…す、き…」 初めて溢れた本音。 本当は好きなんだ…誰にも渡したくねぇくらい。 愛なんかかいらねぇ でも 少し寂しくて… お前を求めてしまう end 120408 main |