綱吉×獄寺 由紗さまへ 何となく獄寺君に会いたくなって、迷惑かと思いながら夜に電話を掛けたら嬉しそうに電話を出て、「いま、会いにゆきます」と獄寺君は無駄に格好良く言って公園で会うことになった。それで今俺は公園に一人でいた。獄寺君は俺の気持ちに気付いちゃいない。ただ純粋に十代目の俺を慕ってくれている。裏切る様な真似はしたくない。けど、 「十代目、お待たせしましたっ」 獄寺君が走ってきた。月明かりで獄寺君の肌が白く浮かぶ。綺麗だな、触れてみたいなとぼんやりと思った。 「十代目、」 「え、ああ、わざわざごめんね…、大した用事もないのに」 「いえ」 二人でベンチに腰掛けた。何を話そうかと迷って月を見上げる。月に雲が掛かりそうだ。獄寺君と二人きりだなんて思っていたけれど、月が俺達を見ていた。小さく息を吐いた。 「何か、あったんですか、…その…話す事とか」 「うーん…あると言えばある…かも」 君に気持ちを伝えられたら、どんなに楽か。そんな事を考えていたら、夜の冷たい風が吹いた。ひんやりと頬を撫でる。雲がゆっくりと風の向かう方へと流れていく。 「何でもおっしゃって下さいね、…十代目の仰る事は出来るだけ大切にしたいので」 獄寺君は優しい。これが偽りの優しさだとしても君が好きだと俺は言ってしまいそうだ。 雲がゆっくりゆっくりと月を覆っていく。段々と辺りも暗くなっていった。真っ暗な空。街灯だけが気だるい白さを落とす。 ふたりきりだ 俺は衝動的に獄寺君に口付けた。柔らかい感触。ゆっくり離せば驚きを隠せない君。ひんやりとした風がまた吹いた。 「好きだよ」 雲が流されて、再び月が顔を見せる。白い光を溢しながら月は笑っていた。 それはこれからを見詰めて嬉々として笑っているのか、嘲り笑っているのか。 未だ知らない 俺等の未来 月だけが知る 俺等の未来 end 090509 main |