真っ赤なウエディングドレス | ナノ
真っ赤なウエディングドレス



綱吉×京子 十年後 死



俺と十代目は仕事から帰った。
今日は血腥い任務で、二人で反吐を吐きそうな思いで帰って来たのだった。
もう夜中だからアジトは静かだった。十代目は「おやすみ、」と俺に一言言って自室に戻られた。

次の日の朝、十代目のお部屋に出向いたら廊下で別人の様な十代目を見た。
そして十代目はこう、話始めたのだ。

「夜帰ったら、未だ京子が起きていたんだ、」

笹川の妹は十代目と昨年結婚した。それはそれは幸せそうだった。

「いつも、体に付いた血痕は洗ってから京子に会う様にしていたんだけど、もう寝ているだろうから洗わずに部屋に入ったんだ。」

そういえば、いつも風呂場へ寄ってから部屋に戻っていたのを俺は思い出した。

「京子は俺を見て怯えていたから、慌てて血を洗い落としたよ、」

十代目は俯いた。微かに笑っていた。

「でも慌てたって仕方なかったんだ」

少し寒気がした。嫌な、予感がする。

「隣に寝ていた筈の京子がさっきいなくて…。京子は俺が寝ている間に真っ白なウエディングドレスに着替えていたんだ。」

「真っ白なウエディングドレス、ですか」

結婚式に着ていた煌びやかな純白のドレスが脳裏に過った。

「そうだよ。俺は京子を探して窓の外を見たんだ」

俺は目を見開いた。十代目は表情を変えない。

「そこにはね、真っ赤なウエディングドレスを着た京子が倒れていたんだ」

十代目は俺を見た。
そこには悲愴な笑みがあった。

「十代目ッ、」

「…やっと手に入れたのに。…ずっと憧れてきて、なのに…」

十代目は拳を握り締めた。きつくきつく。

「それだけ…だから」

十代目は自室へ戻ろうとする。どうしても引き止めてしまった。

「十代目、」

「また、後で」

十代目は自室へ戻っていき、やがてぱたん、と扉が閉じ…
その背中を俺は見逃さなかった。後で、はいつ来るのだろうか。

もうその部屋から十代目は戻って来ないのではないか。


それから、銃声が響いたのは俺が扉に背を向けて間もなくの事だった。



end





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