ディーノ×雲雀 「こんなホテルがあったなんて初めて知ったよ」 僕はディーノに連れられて、ディーノが泊まっているホテルへと来た。並盛が一望出来るスイートルーム。此処で不自由無く暮らせるだろうという位色々な物が揃っているし、何といっても広い。 「すげえだろ、恭弥、今日泊まっていくか、」 「此処なら泊まってあげても良いよ」 僕はすんなりと承諾した。こんな場所滅多に無い。此処を応接室代わりに使いたいと思っていたところだった。ディーノは珍しく素直にする僕を見て何処か嬉しそうにしていた。まるでお菓子を貰った子供みたい。 「お、珍しいな。それってもしかして、」 溜息が漏れる。貴方の考えは分かり易い。此処で貴方と躯を交えるのも良いかもしれない、とも僕も思うけれど此処じゃそれは少し勿体無い。そうだな…、馬鹿らしいけど唯二人で居たい。 「如何わしい事でも考えているの、僕は今日、貴方とゆっくりしたいと思っていたのに、」 こういう言葉に弱い事は百も承知だ。一応本音だけれど。 こんなへなちょこがマフィアのボスだなんてね。 もし、僕がマフィアのボスなら世界征服も夢じゃないね。でもこんな世界を征服してもどうしようもないけど。 「恭弥がそう言うなら…」 僕は窓硝子にそっと手を宛てた。ひんやりとした冷たさが皮膚を伝って躯に伝う。外界は紫の世界に飲み込まれていく。橙色が段々と飲み込まれ、消えてゆき、紫に飲み込まれたら、紫は群青に喰われていく。そうして夜がやって来る。 「綺麗な夕間暮れだな」 ディーノが隣に来て同じ様に外界を見渡す。窓に映るディーノのアンバーの瞳が何処か煌いて見えた。 「ねえ、」 僕が声を掛ければ貴方は振り向いた。金糸が微かに揺れる。 「何だ、」 「キスしてよ、」 「え、」 自分が気紛れだとよく分かっている。其の気紛れが貴方をと惑わせている事も、よく分かっている。 でも、此の景色の中で口付けを交わすなんてきっともう二度と無い。同じ空には二度と会えないから。 「軽くね、」 ディーノは言われた通りに軽くキスをした。 不思議だ…、 僕は世界征服をしてしまった気分になった。 きっとそれは…貴方が僕の世界になった証拠なのかもしれない。 end 120408 main |