白い背中の赤い傷 | ナノ
白い背中の赤い傷



獄寺×山本 強姦



部活が長引いて、終わった頃には辺りがすっかり暗くなっていた。ダチとも別れて一人で歩いていた。街灯も少なくて、何処か不安な心持になる。暫く歩いていると、後方から微かに足音が聞こえた。大して気にしていなかったが、それは段々と近付いてきているような気がした。俺は思い切って振り返ろうとした。その瞬間だった。口を布で塞がれた。声を上げようとしても篭った声しか上がらない。抵抗しようとしても腕が後ろで押さえられていて動けない。冷や汗が滲む。怖かった。そのまま俺は細い路地に連れ込まれた。地面に押し付けられる。思ってもいなかった事に、服を剥がされた。夜の空気が冷たく肌を撫でた。目隠しもされた。口も布で塞がれたままだ。こうされたら何をされるかくらい阿呆な俺でも分かる。ケツの穴に熱いものが触れた。思わず唇を噛んだ。俺はその男の背中に思いっ切り爪を立てた。男は少しも反応しない。それくらいしか抵抗が出来ない自分が悔しかった。躊躇も無く中に入り込んでくる。そこが易々と男性器を受け入れる筈が無い。入り口が切れて凄く痛い。布越しのくぐもった声。噛んだ唇が痛む。男がしている事に何の意味があるのかなんて考えられなかった。その男が誰なのかなんてことも考えられなかった。只管辛くて涙が零れるばっかりだ。痛くて辛くて苦しい。散々腰を打ち付けられた挙句、中に精液を出された。俺はそれと同時に気を失った。

次に目を醒ましたら白い天井が見えた。蛍光灯が少し眩しい。ベッドに寝かせられていた。きょろきょろとすると、ベッドに座りながら煙草を咥える獄寺がいた。俺は獄寺を見詰めた。何で俺は、獄寺の部屋に。

「起きたか」

「何で、俺、ここに…」

「煙草買いに外出たらお前が倒れてたから、運んできただけだ」

「そっ、か…」

犯されてそのままの姿を獄寺に見られてしまったわけだ。本当に情けなくなって、俺は溜息を吐いた。すると、頭を優しく撫でられた。獄寺の手だ。髪を優しく撫でてくれている。変に安心してしまう。そのまま俺は獄寺に抱き締められた。温かい。心臓の音がする。落ち着いて、安堵して、俺は眠りに落ちていった。それと同時と言って良いかもしれない。俺は獄寺に堕ちていった。恋に、落ちたんだ。そう、多分、きっと。

俺が強姦されたのを助けてくれたの以来、俺はよく獄寺の家に行くようになった。今まで俺にあまり笑い掛けてくれなかった獄寺も、最近はよく笑ってくれるようになった。いちいち俺はそれが嬉しかった。二人きりの時に優しい獄寺にまた俺は嬉しくなって、獄寺にハマっていく一方だった。

ある夜、俺は獄寺の家に忘れ物を取りに戻った。獄寺が当然の様にいるだろうと思っていたのに、いなかった。俺は獄寺と一言だけでも言葉を交わしたら帰りたいと思って、家の中を探した。寝室、キッチン、居間、結局いたのは風呂だった。開けっ放しだった脱衣所に入る。磨り硝子の向こうに獄寺のシルエットが見える。凄く、綺麗。

「ごく、でら」

ゆっくりと扉を開ける。そこには白い背中、と、思った。

赤い傷。

爪を立てられた跡。

俺は息を飲んだ。冷や汗が滲む。そこにゆっくりと振り返る獄寺。獄寺の口元は、三日月の様な弧を描いていた。



end





090919
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