山本×獄寺 「野球馬鹿ーおせぇよ」 「わりっ、」 俺は山本が野球部を終えるのを校門で待っていた。彼是一時間は待った気がする。それでも待っている俺は少し重症かもしれない。 「あ、山本君だっ、」 「獄寺君一緒に帰るの、」 山本を待っている間、女子に絡まれていた。俺は適当にあしらっていたが女子は満足げではしゃいでいる。こいつ等がどうも俺には解せない。 「獄寺、早く帰ろうぜ」 「おう」 じゃあな、と女子に一言言って山本と歩き出した。 また山本は嫉妬するんだろうな…と予想がついた。毎度毎度の事だから。 「獄寺、あの女子達は、」 やっぱり。 思った通りだった。 「知らねぇ」 「ほんとかよ」 「ほんとだよ。…ったくお前はすぐ嫉妬すんだな」 「だって…」 口ごもりアスファルトを眺める山本は、中学の頃とあまり変わっていない。 そんなところが好きだった。何年経ってもお前はお前でいて欲しい。 「ふ」 「な、何だよ、」 「何でもねぇよ」 俺は小さく笑った。中学の頃からいつも能天気で楽観的なくせに変に不安でいて…。 「山本、」 「ん、」 「いつもの公園で待ってろ」 「…お、おう」 首を傾げるが、素直に公園へ向かう山本を見送ってから俺は最近出来た花屋へ向かった。 「待たせたな」 「あ、獄寺、」 俺の顔を見た途端嬉しそうに笑みを浮かべた。 「はいよ」 俺はさっき花屋で買った一輪の赤い薔薇を差し出した。 「何これ」 山本は呆気に取られた表情をしている。 目を点にして首を傾げている。 「薔薇」 「いや、誕生日とかでもねぇのにさ」 「受け取らねぇなら喰っちまうぜ」 「えっ、喰うのかっ、や、駄目だ、」 「んじゃ早くしろ」 「ぉ、おう、わっ…ってぇっ、」 山本はあたふたとして慌てて薔薇を手にした時に棘に触れたらしい。 「恋する者には、薔薇の花も刺が無いように見えるってな」 「…、」 深紅の薔薇と俺の顔を交互に見て再びきょとんとした。いちいちするお前の表情が好きだった。 「一度っきゃ言わねぇからよく聞いてろ」 「ん、おう」 鼓動が高鳴るのが分かる…。俺はゆっくりと口を開いた。 「俺はお前が好きだ」 「………」 山本が珍しく顔を赤らめた。内心可笑しくって小さく笑った。 「その薔薇は、お前がいちいち不安になっからやるんだ」 「…そっか…」 「俺はお前のもんだ。…そうだろ、」 山本は大きく頷いて笑った。それでもって俺は強く抱き締められた。 「ありがとな、獄寺っ、」 「…ん」 「愛してる」 山本は眩しい程の笑顔を浮べた。 そう笑っていて欲しい。 安心していて欲しい。 ただそれだけを願ってお前にこの花を捧げる。 end 120408 main |