山本×獄寺 海斗さまへ 今日は一週間振りに山本が俺の家に来る。部活の後、泊まりに来るんだ。俺は身構えた。そりゃ、恋人が泊まりに来るとなればいかがわしいというかちょっとアレな雰囲気になったりとかするし。今日こそは山本とあんなことやこんなことをやってやる。そう覚悟を決めてた時、山本が来た。 「山本ッ」 「ただいまー…」 「山本、ヤろうぜ」 「お腹空いたー…」 山本は家に入るなり俺の誘いをスルーしてぐったりとした様子だった。くたりと俺に寄り掛かってくる。どきり。次の瞬間山本の腹からきゅるるるる…と腹の虫の鳴き声が聞こえた。随分と情けない鳴き声だ。 「夕飯食うか」 「おう」 俺は一生懸命山本の為に用意した夕飯を並べた。味見はしてないから分からないが、美味しいものに違いない。 「獄寺作ったのか、」 「ああ」 「さんきゅーな」 山本が嬉しそうに笑う。この顔好きだ。山本は夕飯を普通の顔して食べ始めた。多分美味しいんだと思う。俺は向かいに座って食べてみた。まあ普通だ。 夕飯を食べてから暫くぼんやりとテレビを見ていた。どれもこれも大して面白くないし、山本はこちらに見向きもしない。山本にちょっと寄り掛かったら肩を抱いてくれた。それだけで随分と俺は幸せになった。嬉しい気持ちが表情に表れそうになり必死で隠す。 「…山本、」 「ん、」 「俺…幸せだ…バカッ」 「うんうん俺もなのな」 山本が優しく頭を撫でてくれる。山本の長い指が髪をすく度にムラムラしてきた。そうだ。今日はこいつとあんなことやこんなことをするって決めたんだ。遂行しなきゃいけない。でもどうやって。さっき直球で言ったらスルーされた。もう少し上手な誘い方をしなければいけないのか。 「やまも、」 「あ、野球始まるッ」 山本が慌ててテレビのチャンネルを変えた。俺の天敵野球がテレビの中で始まっている。これを見出すと山本は止まらない。振り向きもしない。仕方ない。野球が終わるのを待つ事にした。 テレビを見ながら大騒ぎだった山本も延長戦辺りで静かになった。俺はテレビを見詰めながら山本に言った。 「山本、セックスしよ」 返事が聞こえない。山本の方を見れば、寝てる。涎まで垂らして。ちくしょうまた山本と一つになれなかった。でも部活の後で疲れてただろうし。もういいや。俺も寝よう。 山本に寄り掛かって明日こそはあんなことやこんなことをするんだと決意を新たに瞼を閉じた。 end 090511 main |