何でもない日に乾杯 | ナノ
何でもない日に乾杯



山本×獄寺 十年後



眠りから醒めて目をそっと開けたら、視界が一瞬青に染まる。そして一瞬で消える。白いカーテンの隙間から漏れた光が眩しかった。布団を退けて起き上がる。隣で寝ていた筈の山本はもうすでに起きていて、テレビの天気予報を見ていた。毎朝聴いている声だ。起きた俺に気が付いて山本はテレビを消す。ぷつり。

「おはよ、獄寺」

「…ん」

俺の方に来るなり抱き締めて、額にキスをしてきた。乾いた唇が少しくすぐったい。段々と頭も起きてきた。一日の予定を確認しようと壁に掛けてあるカレンダーを見る。今日は特に予定が入っていないようだ。久々にゆっくりと出来る休日らしい。

「今日は一日中晴れだって。お天気お姉さんが言ってた。今日は散歩日和だな」

「散歩日和だなあ…。行ってくれば」

「え、獄寺も一緒じゃないと」

「考えとく」

俺は山本を押し退けてシーツにくるまりながら浴室まで歩く。昨晩情事の後にすぐに寝たから服も着ていなかったし、山本が中に出した白濁が太股を伝ってきそうなのもあって早くシャワーを浴びて着替えたかった。浴室に来て早速お湯を被った。髪が重くなる。昨日詰め替えたばかりのシャンプーを掌に吐き出す。びちゃ。青っぽい色をしていてちょっと毒々しい。髪がごわごわになりそうだ。そうは思ったがぐちゃぐちゃと泡立てた。案外悪いものではないようだ。シャワーを浴びてから適当な服を着て戻ると、部屋は闃としている様だったが、案外そうでもなく、山本が静かにテーブルの上に酒瓶を並べているだけだった。風呂から出た俺に太陽みたいな笑顔を向ける。

「じゃーん」

「何で並べてんだよ」

「美味しそうだから」

「あ、そう」

俺の薄い反応に山本は口を尖らせた。すると冷蔵庫から炭酸飲料を持ってきた。真っ青で綺麗な色をしていた。

「これで酒飲も。これで割ったら綺麗だと思うのな」

「朝っぱらからなあ…」

「…いいだろ、」

「……たまにはな」

にやりと笑い合う。淡青色をした酒がグラスに入る。二人で何となくグラスを寄せて、それを口にした。

「今日何の日だ、」

「何でもない日」

「…何でもない日、な」

何でもない今日この日を幸せだと思った。



end




090620
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