白くて甘い日曜日 | ナノ
白くて甘い日曜日



獄寺×京子



「獄寺君、今日はケーキ買ってから私の家来て。今日お兄ちゃん部活で家にいないから、ね、」

私は獄寺君を見上げながら言う。獄寺君は意地っ張りだし、ちょっと意地悪だけど、私に甘い。それに優しい。二人っきりの時に見せる優しい顔が好き。

「…たまには、そうすっか」

「やったあ」

獄寺君の腕をぎゅってして幸せな気分になる。獄寺君は髪を優しく撫でてくれた。
二人でケーキ屋まで向かう。付き合ってるのはお兄ちゃんにも内緒にしているけど、獄寺君が恋人なのって言いたい気分もちょっとある。だってほんとに大好きだから。ケーキ屋はいつも通り美味しそうなケーキを沢山並べている。見た目も可愛いし、ほんのりと甘い匂いがするのも好き。

「ほら、選べよ」

「どれにしよう…、」

「俺はガトーショコラかな」

「私は…やっぱり苺のショートケーキかな」

「あとクリームチーズケーキだろ。と、」

「チョコレートケーキ」

「でモンブランな」

「そんな食べられるの」

「さあ」

獄寺君はケーキの棚を一瞥してから店員さんの前に立った。

「ガトーショコラ、苺のショートケーキ、クリームチーズケーキ、チョコレートケーキにモンブランあとオペラ」

早口で注文する。最後の一つ余分な気がしたけど何も言わない。余ったケーキはいつもツナ君の家かハルちゃんの家に行く。だから獄寺君は多めに買うのかも。いつも半分にしようって言うのにいつの間にか獄寺君は会計を済ませてケーキを入れた箱を持っていた。

「お前の家行くぞ」

「うん」

二人でお店を出て歩き出した。商店街の人混みに混じる。そんな中で右手が握られた。はぐれない様に。
日曜日は大抵獄寺君と過ごす。今日もそう。日曜日って凄く幸せ。獄寺君と一緒にいられるだけで幸せ。獄寺君と手繋いだらもっと幸せ。獄寺君とキスしたらもっともっと幸せ。デートの度に思う。先週はツチノコ探し。よく分からないけど凄く楽しかった。ツチノコは見付からなかったけど。

「笹川、ここだよな」

商店街を抜けて住宅地を少し歩いてから獄寺君が足を止めた。私の家の前。

「そう」

私は鍵を開けて自分の部屋に獄寺君を連れてくる。昨日綺麗に片付けたから大丈夫。部屋も綺麗。

「相変わらず綺麗な部屋だな」

「…獄寺君が来る時は」

小声で言って二人でちょっと笑う。獄寺君に髪を撫でられて頬を撫でられてキスをする。

「お前の大好きなケーキ食べるか」

「うん」

二人で床にぺたりと座ってケーキの箱を開けた。綺麗にケーキが並んでる。毎回ちょっとどきどきした。

「何から食うかな」

獄寺君がケーキの箱を覗き込みながら呟く。私は苺のショートケーキを箱の中でするりとビニールを剥がして素手で手にした。悪戯心に火が点く。

「獄寺君、」

「ん」

獄寺君が顔を上げた瞬間にケーキを頬にべちゃり。獄寺君はちょっと驚いて私を見てからクリームチーズケーキのビニールを取って私の頬にべちゃり。甘ったるい指先は私の頬を撫でて唇を撫でた。白くなった唇でキスをする。苺が口に入れられる。

「隼人く、ん…、」

「京子、」

耳元を舐められて耳から体が熱くなる。床に押し倒されてずっと近くに感じる獄寺君の体。もう一回キスをして、彼を見詰めて。

「大好き」

「俺も」

空気まで甘くなる。
凄い幸せ。
またキスをしようとしたその時だった。


「京子、入るぞ」

お兄ちゃんの声。

「え、」

「げ、」

身動きが取れずに二人で固まる。お兄ちゃんはすぐにドアを開けた。お兄ちゃんは私と獄寺君を見て目を丸くする。そして次に眉を寄せた。

「タコヘッド、京子、何で喧嘩しているのだっ」

「喧嘩、」

「う、うっるせぇ芝生メット、きょ、笹川がケーキぶつけ」

「嘘をつくなっ、京子がそんなこと」

「ほんとよ、お兄ちゃんっ、獄寺君が私の卒業アルバム見ようとしたから、」

「え、」

何かもう雰囲気も何も無い。もう、お兄ちゃんのばか。



end





090521
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