手を繋ぎたい | ナノ
手を繋ぎたい



紅様へ

山本×獄寺



ちょっとカルシウムの足らない少年、獄寺と付き合い始めて大体一週間経った。バレンタインデーという日を利用して告白したら、獄寺は意外にも顔を真っ赤にして頷いてくれた。
それから一週間経ったものの、付き合う前と殆ど変わらない。部活が終わるのを待ってくれて、一緒に帰るようになったくらいだ。それもちょっとした進歩で嬉しいけれど、やっぱり手繋いだりとか、ちゅうしたりしたいな、と思うわけだ。でも相手は獄寺というのもあって、それが叶うのは難しい。俺は少し頭を悩ませた。

部活が終わってから、校門で待っている獄寺のところに走っていく。獄寺はいつもながら不機嫌そうだ。

「おせぇ」

「ごめんな、一番に着替えてきたんだけどさ」

獄寺は煙草に火を点けながら歩き出す。煙草の匂いにも慣れてきた。その匂いが獄寺の匂いに思えてくる。それでちょっとどきどきする。
俺は獄寺の手を見た。指輪が嵌められている白い指。少し骨ばった手。やっぱり手繋ぎたい。

「…何だよ」

手を見ていたことに獄寺は気付いたらしい。

「手、繋ぎたいな、とか…」

言っちゃった。しかも曖昧な言い方。獄寺が顔を赤くした。

「勝手にすりゃ良いだろ」

「え、まあ、そうだけどさ…じゃあ、繋いじゃう、」

「わざわざ言うな」

待ち望んだ獄寺の手に触れようとした。その時だった。


ぱちっ


「いて」

「って…静電気かよ」

「…あー」

静電気のせいでどうしたらいいのか分からなくなってしまった。どうしてくれるんだ、静電気。そんな事を考えていたら獄寺の手が俺の手を取った。

「これで満足だろ、」

呆気に取られて俺は何も言えなかった。俺、今変な顔してるかも。

「何とか言えよ」

「嬉しい」

野球の解説者みたいに上手く言えないから一言言ったら、獄寺も嬉しそうだった。


ああもう、この手を離したくない。



end





090224
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