山本×獄寺 深夜、ベランダで山本がぼんやりとしていた。俺はベッドから抜け出して山本の元まで行く。隣に立って山本の横顔を見詰める。視線の先にはあるアパートがあった。電灯がちかちかと光っている。電灯の寿命が来そうなのかもしれない。俺は再度山本を見た。 「…何考えてんだよ」 「あの電灯がさ、ちかちかしてんのって、何か意味があんのかな、」 「…意味、」 電灯がちかちかしている事に意味も何もあるのだろうか。そもそも電灯がきれそうになっているだけなのに。何かを意味しているというなら信号か何かだろうか。不規則に光っていて何だかさっぱり分からない。 「…信号、」 「……あ、かもしんねぇ…。何かよく分かんねぇけど、助けを求めてんのかな、とか」 「助け、」 「助けてーって」 もし、あの電灯が助けを求めているなら助けに行かなければいけない気もするのだが、それも馬鹿らしい気がする。 「電灯が、」 「んー…」 「女がか、」 「あ、女の子かも」 「アホか」 女なら助けに行く価値があるかもしれない、と俺も山本も思った。多分。山本は首を傾げた。暫くそれを二人で見詰める。 ちかっ ちかちかっ ちかっ 不規則に光るそれに目が釘付けになる。俺達は電灯に惚れちまったのだろうか。それもちょっと違う。何故って、それは俺達が恋人同士だからだ。電灯なんかに山本を奪われたらたまんない。何だろう。その電灯を助けてやりたいんだか、その電灯の寿命を見届けたいんだか。 「おい、どうすんだよ」 「どうしよ」 流れる沈黙。 どうしようもない俺達。 光り続ける電灯。 「…消えないかな」 「消えねぇな」 埒があかない。俺はその電灯の命が尽きる瞬間を見るのを諦める事にした。山本の服を引っ張る。山本は仕方なしに電灯から目を逸らして俺の腰に手を回し、部屋に入ろうとした。でもやっぱり気になって振り向いた。 ちかっ 一回光って、それからその電灯がつく事はなかった。寿命がきたのか。妙な寂しさが胸に残る。山本も同じ気持ちなのか眉根を寄せて切ない表情をしていた。その寂しさを紛らわす様に俺達は一回キスをして、ベッドに潜り込んだ。 end 090315 main |