夏、我儘な、少女 | ナノ
夏、我儘な、少女



獄寺×京子



「暑いね、隼人くん」

夏休みも始まったばかりだったが、暑さで俺も京子もバテていて、俺の部屋で二人して床に寝転んでいたというよりは倒れていた。

「ん…あちぃ…」

扇風機が当たるが、暑いものは暑い。汗が滴る。シャツも汗が染みて、髪も肌に張り付く。

「アイス食べたい」

京子がぽつりと呟いた。京子も同じようにキャミソールに汗が染み、髪が肌に張り付いている。俺の方をぼーっとした表情をしながら見詰めてくる。

「そうだな…」

「…」

「隼人くん、買ってきてよ」

「…やだ」

むすっと頬を膨らませている。買ってきてやりたいところだが、体を起こすのも嫌だし、コンビニから家までの間にアイスは全て溶けてしまいそうだ。

「アイス食べないと死んじゃうよ」

我儘モードに入ってきた。こういう時、芝生メットなら走って買いに行くに違いない。俺は動けない。京子はじっと俺を見詰めてアイスを買ってこいと訴えている。
じりじりと身を俺の方へ寄せてくる。首筋に張り付く髪と、暑さに赤らんだ頬と、キャミソールから覗く胸元が迫る。思わず手を伸ばしたら、手を握られた。

「アイス」

「…」

「アイス買ってきてくれたら…元気出るよ」

そんなことを言いながら、京子は俺の太腿に指を這わせる。結局俺は怠い体を起こした。京子に軽くキスをして、財布と鍵を取って玄関へ向かう。

「隼人くん、行ってらっしゃい。待ってるね」

背中にかけられた言葉を聞いて、ドアを開けた。全く京子には敵わない。



end





20130710
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