獄寺×京子←綱吉 見てしまった。 放課後、獄寺君を呼びに行こうとしたら、西日の射す教室の窓際に獄寺君と京子ちゃんが見つめ合っていた。見てはいけないような心持ちになったけれど、つい見つめてしまった。もうそこからはお決まりだ。ゆっくり距離が近付いてキスをする。 息を詰めた。瞬きが出来ずにいた。ずっと好きだった京子ちゃんと仲の良い友達である獄寺君が付き合っている。一目瞭然だ。心臓がばくばくすると同時にちくちくして痛い。 カーテンが風にふわりと靡いて、またカーテンが落ち着いた時には獄寺君と京子ちゃんは唇を離していた。獄寺君はふと教室の外にいた俺に気付いたようで、一瞬目が合った。少し驚いたように俺を見て、次には何事もなかったように京子ちゃんに視線を戻した。俺はいけないことをしてしまったように感じて走ってその場から離れた。家に帰っても、あの光景が頭から離れずにいて、ずっと考えていた。 翌日、屋上で溜息交じりに空を眺めていたら、獄寺君が来た。来てしまった。いつも通りの笑顔で傍に来て、隣に腰掛けた。 「…見ましたよね、」 俺の方を見ないまま、獄寺君は不意にそう言った。見なければ良かったと思った。でも見た上に目も合ってしまったからには嘘を吐けない。 「…うん」 「ですよね」 小さく笑った獄寺君の横顔がいつもより大人っぽく見える。いつもみたいに遊んだり笑ったりする友達というよりは、男の人だった。 「すみません、十代目が笹川を好きなことは知ってます…」 獄寺君は思い詰めたように俯きながらそう言った。 「俺も笹川が好きです」 はっきりとそう言って、俺を真っ直ぐ見詰めた。思わず息を飲んで獄寺君を見詰め返した。かないっこない、そう感じた。悔しさや情けなさがじわじわと滲んできて、俺は苦笑いした。 「獄寺君はカッコ良いし、京子ちゃんともお似合いだよ。俺には高嶺の花過ぎるしさ」 変な汗が滲んだ。平気な振りをして、言い訳をした。情けない。ちらりと獄寺君を見たら、険しい顔をしている。直後、獄寺君は俺の胸倉を掴むやいなや、何か言おうとした。けれど、何も言わずに息を吐いた。 「これは、男として言わせていただきます。…好きなら、俺からだって奪えばいいじゃないですか。黙ったまま、ただ諦めて、それで良いんですか、」 獄寺君はそう言って、俺から手を離した。息を吐いてから、立ち上がって、俺に頭を下げた。 「失礼なことを言ってすみませんでした」 「あ、いや、いいよ…」 下げていた頭を上げて、俺を見るなり、獄寺君はにやりと笑う。 「早くしないともっと俺のものにしちゃいますよ」 そう言って、背を向けて屋上から出て行った。悔しいけど、なんだかカッコ良くて、京子ちゃんが惚れるのもわかる気がした。女心が少しわかったかな、なんて思ったら可笑しくなって笑えてくる。寝転んで、空を眺めた。獄寺君みたいにはなれないけど、男になろうと密かに心に誓った。 end 130516 main |