電話越しにあいまい | ナノ
電話越しにあいまい



6柊れんさま宅から

リボーン×山本 十年後



今日は俺が世界で一番の幸せ者だったと思う。
朝にツナからハードな任務を言われた時は最悪な一日だーと思ったけど、帰って来るなりみんなからクラッカーとシャンパンで出迎えて、おめでとうって。
ベタなやり方だな と思ったけど、それに引っかかる俺もそうとうの馬鹿なんだと改めてそう感じた。それに久しぶりにあんなに笑って酒を呑んだ気がした
ツナにも獄寺にも、みんなにも感謝しねえといけねえな


足元がおぼつかないふわふわする身体に耐えきれなくてぼふんとベッドにダイブをした
はあー、と幸せな溜め息を吐いてから目を閉じた





ごめん、嘘
本当はあんまりうまく笑えなかった。
楽しかったし、嬉しかったのは本当だけどツナ達が少し気を遣ってくれたのがわかった
だってあの場には小僧…あいつが居なかったから
酒を呑むとすぐこう、感傷的になるのはいけない癖だ。といつかのあいつに言われたっけ。
そして今頃は危ない目にあっているのかもしれない、そう思うと今すぐ駆けつけて 抱きしめて 一緒に戦いたいと強く思う半分、もう死んじゃえーって言う最低最悪な自分がお目見えした
なんでそう思うのかはわからないけど、
俺、たぶん
欲求してる。


だって前から約束をして
今日この日は一緒にいるのだと思っていたらこうだ。

仕方がない、それだけで簡単に片付けられる程、俺はまだ大人になりきれていない。


「ばかみて、」

目を開けると、部屋の中は明かりがついてなくて、真っ暗で静かで今の自分の心にそっくりだと、そう思った
すると、携帯から大きな光と大きな音が鳴った
ちかちかする携帯を取って まさかあいつから?とか思ったら、本当にそのまさかだった。


「ハロー、山本お誕生日おめでとう」

「はは、ありがとう」

「なんだ?元気がねえな」

「どっかの誰かが俺を置いて遠い所にいるからな」

「…しょうがねえだろ」

「…わかってる」

「山本、」

「なに?」

「こえだけでも逢えてよかった」

「……そんなくさい言葉よく吐けるな」

「お前のためならなんだってできるさ」

「ほんとかよー」

「俺がお前に嘘ついた事あるか?」

「うーん、あるだろ きっと」

「…俺は信じられてないな」



電話越しに
小僧が笑った気がした。それに俺も笑って

「なあ。」

「なんだ?」

「今すぐ逢いに来てって言ったら来てくれる?」

「それは無理だな」

「即答だな」

「明日になったら」

「明日?」

「逢いに行く」

「……うん、待ってる」

「それじゃあな」

「おう、明日な」
向こうには見えてないけど俺はへらりと笑ってやった。
今、泣いているのは内緒にしていてほしい


「山本」

「ん?」

「泣くな」

「泣いてなんかねえよ」

「そうか、ならいい」

「うん」

「…じゃあな」

「うん、おやすみ」


俺がそう言うと
リボーンはまた夢で。でなんて
またくさい言葉を言って、電話は切れた。
ぱたんと携帯を閉じて、目を閉じた
俺の目からはもう一粒の涙がこぼれて、ベッドに染み込んだ。
目を閉じていると顔が浮かんで、抱きつきたくなった。
こんな事考えるなんて女々しすぎると思いながら、どんどん深い眠りに溺れていった



今日、この日は
想って眠るから、絶対に逢いに来てな。



end





090425
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