綱吉×獄寺 敬愛はいつしか恋に変わってしまった。それはまるで魔法に掛けられたかのようだった。 俺が恋をしているのは、ボンゴレ十代目となるお人。いけないと思いつつも、好きという気持ちが強くて抑えきれない。恋をしてから世界が変わった。十代目の笑顔を見ればどぎまぎするし、授業中に十代目を見詰めていると何だか心苦しい。シャマルに聞くまでは、この感情を知らずにいた。聞いてみるとどうやら恋というらしい。意識をし出すともう止まらない。坂から転げ落ちる様に恋に落ちていく。 「獄寺君、今日一緒に帰らない、」 十代目と初めて出会って俺を助けてくれたその日を思い出すと胸が熱くなる。それは身体中に伝わる。ああ、息が出来なくなりそ… 「獄寺君、」 「はいッ、」 つ、ついうっかり十代目のお話を聴き逃してしまった。俺としたことが…。思いに耽るのも程々にしなくては。 「…きょ、今日一緒に帰らない、」 「…あ、はいッ、勿論」 初めて十代目から誘われた。普段は俺から言うのに。もしかして、俺が言い忘れていたから気を使わせてしまったのだろうか。それなら申し訳ない。兎に角、放課後十代目と一緒に帰るのが楽しみだった。 やっと退屈な授業を終えて二人で下校する。十代目は何処と無く嬉しそうに見える。俺と同じ気持ちならどれだけ良いだろうか。そう思うと少し切なかった。 「…獄寺君、今日誕生日でしょ、」 そういえば、そうだった。ここのところ十代目の事ばかり考えていて、自分の誕生日などすっかり忘れていた。…なんておくびにも出せない。 「リボーンから聞いたんだ。言ってくれれば何か…用意出来たのに」 「いえ、そんなッ、俺の誕生日なんか…」 十代目は少し怒った様子で俺を見た。そんなつもりはないのにと胸が痛む。 「…獄寺君が生まれた日だから、俺はお祝いしたかったの。…獄寺君…何も気付いてないの、」 恋は盲目とはこの事なのだろうか、 「俺はね、獄寺君の事が好きだよ」 心停止するかと思った。これが夢じゃないかとも思った。でも確かに目の前には十代目がいて、俺がいる。夢じゃない。 「ぉ、俺も十代目が、好きですッ」 言った瞬間、顔が焼けるように熱くなる。どうしよう、言ってしまった。 「…知ってるよ」 「え、」 「獄寺君、分かりやすいもん。…あ、そうだ、今日は家に来なよ。母さんに何か作ってもらおう」 「良いんですか、」 「…勿論。ほら、早く」 差し出された十代目の手を見詰めた。それをそっと握った。頬が火照る。この熱が、手から伝わってしまいそうだ。 俺はこの幸せな現実を苺を食べるみたいに優しく噛み締めた。 end 120407 main |