綱吉×山本 「何か結局二人になっちまったな」 山本は肩を竦めて笑う。今日は皆が俺の誕生日パーティーを開いてくれた。楽しく盛り上がっていたものの、やがて時間は過ぎて、人は帰っていき結局今残っているのが俺と山本だった。二人になってから急に蝋燭の火が消えたみたいに静かになる。場を取り繕う様に俺も山本もそわそわする。 「やっと俺と同じ歳になったな」 「あ、そうだね。山本の誕生日早いしね」 「だな。…いつの間にかダチとして長い付き合いになったな」 しんみりと言われた言葉が微かに胸に痛みを与えた。俺はずっと片思いをしている。友達である山本に。思いを告げたら何もかも壊れてしまいそうで、恐くて言えない。 「そう、だね」 一瞬今しか無いのかもしれないと思うと心拍数がどっと上がった。何だかくらくらする。 「ツナ、どうかしたのか、」 自分がどんな表情をしていたのか分からないが、山本が心配そうに顔を覗き込んできた。俺の顔は赤くなっている気もするし、青くなっている気もする。一瞬目が合った。綺麗な目をしている。まるで硝子玉みたいだ。 「…やまもと、」 最低だ。口が勝手に動く。山本と友達でいたいのに、今それは壊れ掛けている。俺が山本との間に出来たものを金槌で叩き割ろうとしている。でもそれは唯壊そうとしているんじゃなくて、新しいものに変える為に壊しているんだ。 「…すき、だよ」 山本は目を見開いた。何処かでかしゃんと何かが壊れる音がした気がする。俺はどうしようもなく泣きそうになった。 「…どういう…意、味」 俺は罪悪感に満ちた両手で彼を押し倒した。山本は恐いものから逃れるみたいにぎゅっと目を瞑る。まだ誰も触れていない唇に唇を重ねた。閉じていた目が開いて俺を捉えた。顔が赤くなる。 「………分かったよ」 唇を離してから山本が漸く口を開いた。それから腕を目元に置いて小さく笑った。 「…付き合うか、俺と」 山本の言葉に揺れる。彼の言葉は微かに震えていた。 「いいの、」 「…これからだから」 「今までは、」 「良いんだよ…、これで」 その声は出される度に掠れていく。ついには声を出す事を止めてしまった。神様、俺は彼に思いを告げたのは間違いだったのでしょうか。なんて聞いても仕方ない。神様なんていないんだから。 「泣かないでよ…、山本」 「…わりぃ」 泣かせたのは俺なのに何を言っているんだろう。 山本はきっとこれから始まる何かを知らないから怖いんだ。俺もこれから始まる何かを知らない。心が怯えている。それでも俺はそれに突き進もうとしているんだ。 俺は山本を抱き締めた。 一緒なら大丈夫。 二人なら大丈夫。 そう心の中で強く思った。 end 120407 main |