笑った後に残るもの | ナノ
笑った後に残るもの



山本+獄寺+綱吉



試験が終わった日、気晴らしに遊ぼうと山本が提案した。そんなわけで山本と獄寺君が俺の家に来る事になった。そして決まる前に俺の家で何するのと聞いておけば良かったと今更後悔をした。
部屋に三人居てもやる事がなかった。ゲームをやろうと言っても獄寺君も山本もゲームなんてしなさそうだし。今の状況は獄寺君が窓際で煙草吸ってて、山本は牛乳inゼリーを飲んでいる。俺は必死に何か三人で出来るものがないか考えていた。

「あ、トランプやろうぜ」

山本の一声に俺はハッとなった。トランプなら三人で出来る。獄寺君も山本の一声に反応するかと思って当人を見たら、窓を開けて身を乗り出して何かを見ていた。首を傾げて窓の外を見れば、玄関の前に猫がいる。

「…獄寺君、猫気になるの、」

「………え、あ、いや、そんな別に猫を見ていたとかそんなんぢゃ…」

「獄寺猫見てんなんて可愛いのな」

いつの間にか三人で窓の外を見ていたらしい。獄寺君が山本を殴ってから、獄寺君はトランプをやりましょうよ、と山本と同じ事を言った。何だか可笑しくて笑いながら俺は頷いた。
やるのはダウト。このゲームは変に緊張する。doubtの意味はそもそも疑うという事だ。どきどきするに決まってる。獄寺君はダウトをやった事がないみたいなので、山本が山本的に説明していた。獄寺君は一通り聞いて曖昧に頷いた。

「あ、罸ゲーム有りにしようぜ」

「良いかもね」

「…まあ」

山本の提案に俺が頷いた事もあって獄寺君も頷く。罸ゲームは勝った人が決める事になった。

「俺、ポーカーはよくやったんスけど…これは初めてです。…ダウトッ、」

獄寺君は山本が出す度にダウトコールを掛ける。今のところ違う札を出していた回数は三回。獄寺君の手札は増えるばかり。山本がダウトコールを掛ける時は決まって順番通りの数でない時だから、出す時妙にどきどきする。勿論俺もダウトコールを掛ける。それは獄寺君がカードを五枚出した時だけだったりするけど。
何だかんだターンが進む毎に山本の手札は順調に減っていき、俺の手札は少し増えつつも減っていった。獄寺君の手札は増える一方だった。

「上がりっ」

「ちくしょ、何でお前が一番に上がってんだよ」

次のターンで俺が上がった。獄寺君は閉口すると手元に残された札を山本に投げつける。それを山本は軽く避けて後ろに散らばった。
それ、俺のトランプなんだけどな

「罸ゲームな」

「…ちっ、何だよ」

「そうだな…負けた獄寺は俺とツナに抱きしめられるとかどうだ、」

山本が笑顔を見せる。獄寺君は顔を赤らめる。罸ゲームと分かっている為か仕方ねぇなと言って覚悟を決めたようだ。山本は俺とアイコンタクトをとる。

「…ど、どうぞ…」

獄寺君は俺と山本の間でじっとしている。少し泣きそうになっているようにも見えた。山本と視線を合わせて頷いた瞬間、二人同時に獄寺君に抱きついた。ちらっと獄寺君を見たら真っ赤になっていて。そんな時にドアが開いて、母さんが入ってきた。

「あらあら、三人とも仲良しね」

母さんは机にお菓子とお茶をを置くと部屋から出ていく。いつもならお礼を言う獄寺君だけど、今はそれどころじゃないくらいに顔を赤くして硬直していた。山本がそれを可笑しそうに笑う。釣られて俺も笑う。獄寺君はきょとんとする。それがまた可笑しくて。三人で何が可笑しくて笑ったのかも忘れるくらい笑った。ひいひい言いながらもやっと笑いが収まった時に残ったのは、例えようもない幸福感だった。



end





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