モルヒネ | ナノ
モルヒネ



山本×獄寺



誰かの腕の中に納まるなんてことを、生まれて一度も考えてみたことが無かった。でも今は、その腕の中から抜け出すことが出来なかった。一人でいるのが辛くて、一人でいると苦しくて涙が止まらないし、喉が絞めつけられるような気分に陥る。一人でいることしか知らなかったら、俺はこんな苦しさを知ることはなかった。その反面、腕の中にいる時の幸せを知ることはなかった。

目が合って、キスをして、抱き寄せられて、腕の中。抜け出さない温度。束の間の夢に似ていた。

やっぱり一人で部屋の真ん中に佇んで、過ぎていく時間だけを眺めて夜が来て、朝が来て。時々座り込んで涙を溢して、ひりひりする目で太陽を見て、ぼやけた目で月を見て。ただただお前だけを待っていて。

苦しくて眠れない。会いたくて仕方が無い。腕の中で夢を見させて。



end





091008
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