獄寺×山本 高校卒業後 人生の岐路とはまさにここで、ツナはボンゴレ十代目になることが決まって、イタリアに旅立った。獄寺も後を追うようにイタリアへ行くこととなった。俺はといえば、日本に残されることになった。俺もイタリアに行くと言ったけど、ツナには残っていて欲しいと言われ、獄寺には残れと言われた。俺はツナにとってファミリー以上に友達であり、獄寺にとってはファミリー以上に恋人だった。 朝早く、俺と獄寺は駅へ向かう。獄寺は空港に向かう為。俺は獄寺を見送る為。胸がずきずきした。いつも一緒にいたツナが、獄寺までもが遠く離れた場所に行ってしまう。そんな気持ちを抱えながら、必死に笑って獄寺に話しかけた。いつもより素直に話を聞いてくれる。駅に着かなければいいのに、なんて、思っても歩みは止まらなくて。 「着いた」 人気のない駅に着き、改札を通る。プラットホームには誰も居らず、伽藍堂のようだった。足音がやけに響く。電車もまだ来なくて、俺は黙り込んだ。不意に頭を撫でられた。獄寺は俺の顔をじっと見て少し笑った。 「馬鹿だな、お前」 「…だって、」 「今生の別れだとでも思ってんのか、」 「え、」 「ちゃんと大学卒業したら来い。今のまんまじゃお前は馬鹿過ぎてボンゴレでやってけねぇからな」 「…ん、わかった。ちゃんと勉強して、そしたら、俺、獄寺のとこ行く」 獄寺は笑う。徐々に電車が近付いてくる音がする。何か言わなきゃと思うと言葉が出てこなくて戸惑う。 「電話していい、あ、あと手紙とか、」 「おう。寂しくなったらかけてこいよ」 涙が出そうになった時、電車がきた。言おうとした言葉も掻き消される。獄寺は電車を見てから、俺を見ると、軽く抱きしめた。 「じゃあな」 「…うん。またな」 獄寺は俺から離れて電車に乗り込んだ。俺も一緒に行きたい。乗ったら一緒に行けるかな、なんて考えてしまって、でも足は動かなくて、その場に立ち竦んで獄寺を見つめた。 「amore」 最後に聞こえた言葉を発した獄寺の唇を見て、ドアが閉まった。胸がぎゅっと締まる。思わずぽろりと涙が零れた。容赦なく電車は発車した。どんどんと獄寺が遠ざかっていく。涙で滲んで、もうよく見えない。あっという間に電車はプラットホームからいなくなり、朝が近い藍色の空と、俺だけが残された。 「…さよならって言ったのかな」 end 111031 main |