山本と獄寺 どちらもカマ 体育館裏に呼び出された。誰にって、そう、不良の獄寺に。これって何かご不満があって俺を殴って蹴ってぼっこぼこにして、という展開違いない。俺はどきどきしながら放課後に体育館裏に行った。正直に言うと、早く帰りたかった。俺はある事情があって昨晩はほとんど眠れなかった。部活が無い今日この日、寝る予定だったんだ。が、まあ叶わず。 「来たか、山本」 獄寺がきっと俺を睨んだ。体育館裏がお似合いな彼だ。鋭い視線に体を硬直させる。 「な、何か用か、」 一瞬獄寺は何か言おうとしたが、少し躊躇うも、言葉を発した。 「お前さ、昨晩カマバーにいたろ」 俺は頭が真っ白になった。パニックってこれのことだ。確かにその通りなんだ。俺は、昨晩初めてカマバーに行ってみた。今まで一人で黙ってこそこそしていたけど、ついに孤独に耐えかねた。カマバーに出向こうと決めるまでは只管化粧の練習、いかに女らしく見せられるかの研究をした。そして昨日初めてカマバーに行った。皆良い人だった。中でも店員の人は綺麗だった。プラチナみたいな髪をしていた。 「…な、何で…」 「やっぱり、アレ山本だったのか、」 「え、あの場に獄寺…え、もしかして、店員の…」 「そうそう、そうよ」 「きゃあ、ほんと、あたしすっごい素敵だなって思ってたの」 「わたしだってーほんと初めて来た子なのに可愛い子だなとか、その、化粧も上手いから教えてもらいたいとかあ…」 ついオカマモードが入ってしまった。獄寺も同じだ。はっとなって顔が赤くなった。獄寺も顔が赤くなっている。 「今夜、会ってくんねぇか、その…色々話したいな、って。こう…周りにカマはいねぇしさ。まさかお前が、と思って」 「お、俺もまさか…何か嬉しいな」 「いつものバーにいるから、ね」 獄寺は可愛らしい笑顔を向けてそこから立ち去った。俺はどきどきしていた。今夜会えるんだと嬉しくなったその時、眠るという予定をすっかり忘れてしまっていた。 end 091003 main |