山本→獄寺 「肋骨一本下さいっ」 山本が頭を下げたと思ったら、訳の分からない事を抜かしやがった。山本はちらっと俺を見る。 「馬鹿か、てめぇは。気持ちわりーんだよ、ホモ。何の為にてめぇに肋骨やんなきゃなんねぇんだよ」 この野球馬鹿はホモだ。ガチホモだ。女の子から貰ったチョコだの何だの全く食えない。告白された後で断った直後に情けなくも吐いている姿を見た。一般人が、同性からの告白を大抵は気持ち悪いと思うように、山本は女からの告白が嫌なわけだ。そして山本は同性しか追わない。シャマルが女しか追わないように。 「あの出来れば、左側の上から三番目くらいかな」 「んな大事な部分やれるわけねーだろ、大体貰ってどうすんだ、家に飾んのか、」 「や、飾んねぇけど、そこが無かったら結構俺嬉しいんだよな」 「クソ意味わかんねぇ」 そんな山本は今年の夏、いつだったかの野球部の部長にあっさり振られて傷心していた。あまりに惨めったらしい姿だったから、並盛牛乳を買ってやったら何故か惚れられた。毎日アタックの連続だ。何度好きだの愛してるだの言ったって俺の答えはいつだってノー。なのにへこたれないコイツの神経が分からない。 「そこが無ければ、獄寺の心がちょっと動くかなとか…」 俺は胸元を見た。俺には多分両側合わせて二十四本の肋骨がある。そのうちの片側一本欲しいと言われている。どうすべきかと、俺は不覚にも考えてしまった。あげるわけにはいかない。 「物理的にんなことしてどうすんだよ」 小さく笑った。きょとんとしている山本を見詰めた。 肋骨抜いて隙間なんて開けなくても、心は少しだけどお前の方に動かされていた。 end 091019 main |