学生時代、今思えばなんて幸せな日々だったんだろうか、と思う。
あの頃の彼女は、俺が言うような柄じゃねぇが、例えるならまさに天使だった。所謂不良を気取ってた俺なんかに笑顔を向けて、俺に好かれたいが為に俺の言うことだけを聞いて、すべてが俺中心に回ってた、のに。
彼女が俺の嫁になった時から天使だったはずの彼女は、悪魔へと変貌をとげたのだった。
「晋助ぇ、腹へったー、ご飯まだぁ?」
「あと少しで出来るから大人しくしてろよ。」
俺が結婚以前に普通に描いていた新婚生活は、こんなんじゃなかった。
可愛いエプロンつけた嫁が、仕事から帰ってきた俺を玄関まで出迎えて、「ご飯あと少しだから、もう少し待ってて?」なんて言われて、キッチンで料理を作る嫁を横目に、俺はリビングでくつろぐ。
これが現実のものになると思っていたのに、
現実は、何故か可愛いエプロンつけた旦那、つまり俺が、リビングでくつろぐ妻の為に料理を作っている。
昔一度理由を尋ねたら、「だって晋助の料理、私より美味しいじゃない?」だそうだ。
だからって毎日俺に作らせなくてもいいと思うが、今の嫁に言い返せる度胸など、ない。
その時ついでに、「なんかお前、結婚したら変わったな」って恐る恐る言ったら、「いや、だって晋助が手に入ったし。」って返された。
つまりあれだ。
彼女の本性はコッチで、俺は今の今まで騙されていた訳だ。学生時代に見た彼女は今となっては、幻。
「ん、出来たぜ。」
「わぁ!!ちょーいい匂い!!」
リビングでくつろいでいた彼女はソファーからバッと立ち上がり、一目散にキッチンの席についた。
いただきます、とご丁寧に両手を合わせて言ったあと、俺が作った夕飯にがっついた。どうしたらあんな可愛い容姿で、こんな破壊的な食べ方が出来るんだろうかと不思議に思う。
「んー!!!うまいっ!!」
何だかんだ言って、俺が作った飯を食べて、うまい、と幸せそうに笑う彼女を見ると、これも悪くねーか、なんて思ってしまう、そんな俺は、きっと上手く彼女の尻に敷かれているのだろう。
ごちそうさまでしたー、なんて、これまた礼儀正しく言う彼女を見て、不覚にも可愛いと思う俺は、大分可哀想な男に違いない。
食べおわった食器を洗うのは彼女の仕事なのだが、我が家には自動食器洗い機があるため、彼女の仕事は至って簡単だ。結婚して最初の何日かこそは手動で洗っていた彼女だが、「いや、洗剤、手ぇ荒れる。」と、俺に食器洗い機を買えと催促してきた。
「あんなん買う金あんなら、新しい仕事用パソコンが欲しい」って言ったら、「妻を綺麗に保つお金なんだから惜しまず出しなさいよ。それが夫の義務よ。」と言われてしまい、言い返せなかった。
今や、我が家の生活はすべて彼女中心にまわっている。
食器を洗い終わった彼女は、リビングのソファーに腰掛けてテレビをつけた。
「ぁ、晋助、私見たいドラマあるから先風呂入ってくれない?」
「・・・おう。」
テレビ、かよ。
いや、別に風呂入りたかったし、いいけど、理由がテレビかよ。
どーせこの前から始まった、若手イケメン俳優とか世間で騒がれてる奴が出てるラブコメだろうが。
あ、何コレ、俺嫉妬?
風呂から上がると案の定、彼女が見てるドラマはイケメン俳優が出てるラブコメだった。
あーゆーのがタイプなのかよ?俺と少しも被ってないんだけど。・・・あ、身長、身長が少し近い。奴も低いのか。やべぇ、泣きたい。
何となく無性に心が痛んだので、リモコンを見つけ、テレビの電源を消してやった。
「ちょ、晋助!?今いいとこだったのに、ふざけないでっ」
いいとこ?やっぱ、あの俳優が目当てかよ。思いっきりアップで映ってたもんなぁ?
「あんな男がいいのかよ」
そう言って彼女にキスしたら、彼女は何の表情もかえずに、一言、「終わり?」と呟く。
あぁ、クソ。終わらせてたまるか、テレビなんて見させねぇ。
ソファーを乗り上げて、彼女は俺の下。なのに、彼女は未だ挑発的な目で、俺を見上げてやがる。
日頃のお返し、
キスマークだらけにしてやんよ。
「・・・・晋助?あんた何様のつもり?」
そう言った彼女にびっくりして動きを止めた間に視界がグルリと入れ替わる。
そこに見えたのは、彼女と・・・天井。
「私からテレビ奪ってまで誘ったんだから、覚悟しなさいよ?」
そう言った彼女は今までに見たことのない表情で笑っていた。
「ぇ、ちょ、俺下か‐―」
「うるさい」
反論は聞かない。
とでもいうように、唇を塞がれる。
「逃げたら許さないから。」
そして、離れた彼女の唇が弧を描いた。
キスマークまみれにしてやりたい
所詮叶わぬ俺の夢
2009.12.19
企画.尻の下
藍羅愛美
尻の下に敷かれる高杉、ヤバイですね、ハイ。
素敵な企画に参加させて頂き、ありがとうございました!!
はい、何かすいません、本当すいません、ギャグになりきれない、ギャグでお願いします←
お題からしてアールな方向ばっかにしか思考が及ばず・・・私の文才が無いゆえ、このような駄作になってしまったことを深くお詫び申し上げますm(__)m
でも、書いていてとても楽しかったです!主人公は、いつでも主導権を握っちゃってますよ、はい。羨ましいことこの上なしでございます←
とにかく、こんな変態思考なわたくしでございましたが、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!!
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