「なぁ、月魅ー、来いよォ」

「いやだってば」


飛段は私を腕を広げて呼ぶ。


「来いって」


いつもと違う少し色っぽい声色を出されては、私の意地など簡単に消えてしまうのに。


「・・・だって飛段、変なことするもん」


そう、飛段が来いと言ってるのは飛段の足の間。私を其処に座らせるつもりだ。


「勿論、するぜェ?」


「っ馬鹿!!」


飛段はニタニタ笑って私を見つめた。


「だってよォ、こんなにも可愛くて、好きな女が目の前に居てよォ、手ェ出さねぇ奴のが可笑しいだろ?」


「・・・・・・。」


・・・ずるい、飛段は。
そんなこと言われたら私だって普通に調子に乗るし、浮かれちゃうのに。

心臓が、ドキドキと鼓動を増すのに。


「なぁ、月魅?」


いつもと違う声色。
いつもと違う口調。
いつもと違う真面目な顔。


「・・・ばか」


あぁ、ダメだ。

私はいつも、飛段に負けちゃう。


―‐‐トス


「いい子ー」


飛段の足の間に座れば飛段はそう言って後ろから抱き締めてきた。
あったかい飛段に抱き締められると、私はいつも安心する。
だから今日も飛段に体重を預けた。


「なァ、それって『飛段の好きにして』ってことかァ?」


「馬鹿」


ゴンッ


私は少し怒って、飛段の胸に預けた頭をあげて飛段の顎に頭突きした。


「痛ッテェ!!口切れたじゃねーかよォ!!」


「飛段うるさい、声デカイ、耳元で叫ぶな馬鹿。」


「ひでェー」


「・・・どうせ痛いのは気持ちいいクセに」


そう言うと飛段はゲハハハと大声で笑った。
ほんと、うるさい。



「・・・ぁ、星だ」


上を見れば、其処には闇に光る星が沢山あった。
それを見て、そういえばここは外だったんだと改めて認識する。
だって、いつもならこんな夜に外になんて出ずに、家族と一家団欒しているから。


「・・・なんか平和。」


「何がだァ?」


飛段は少し眠たそうな声。ご飯食べおわるといつもこう。
まったく、幼児め。


「・・・んー、だって私たち、犯罪者になって、里を抜けちゃったのよ?」



そう、私たちは今日、里の掟を破り、犯罪者になった。それは里を抜けることにも繋がった。それだけ、私たちは重い罪を犯したのだ。


「私たち、きっと、こんな幸せで居ちゃいけない存在になっちゃったわ」


決心はした、けど、やっぱり振り替えれば恐ろしいことほかなかった。
私たちは、私は、なんて恐ろしいことをしてしまったんだろうか。





「・・・飛段?」


さっきから何も言わない飛段を不思議に思い、見上げれば、彼は目を閉じていた。





・・・寝てる。



「この脳なし変態露出教信者がッ!!!!」


私が怒鳴っても飛段はぴくりともしなかった。

・・・なんて男なの。


一人で今更不安と葛藤してるのもバカみたいに思い、私も目を閉じた。





‐―ふわっ


途端、体に浮遊感。


「―‐ぇ、わっ」


トスン、


飛段ごと、地面に仰向け。
慌てて頭を捻ると飛段が笑っていた。


「バカ飛段!!寝てたと思ったら―‐ふざけな」
「祈ってた」


私の言葉に重なって、飛段が口を開いた。


「ジャシン様に。」


ペンダントをグッと掴んで私に見せる飛段。


「俺らが幸せで居れますよーにって」


そこで飛段の笑顔。

私は何だか色々なものが込み上げて、取り敢えず突進する勢いで飛段に抱きついた。


「‐―好き、飛段」

「ゲハハハ、何だよいきなりー」


そういって笑った飛段の大きな手が、私の背中に回された。
 
 
そして今度は本当に、飛段は夢の中。





神に背いた犯罪者。
そんな私達が幸せで居られるのだろうか。
いや、居られるはずがない。


でも、飛段と一緒なら、何だか居られる気がするの。

何でだろう。


飛段がお祈りをしたから?
ジャシン様を信仰してるから?
神が許してくれたから?


そんなこと、わからない。



―‐でも何だか、飛段に抱き締められると私はとても安心する。
 
・・・安心すると、眠くなる。
 
取り敢えず今は、暖かな飛段に包まれて、寝てしまおうか。


きっと私たちは夢の中でも幸せなのだから。



に祈る天使
死神に愛された呪われた天使よ




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