ハリポタ小説

噛みつくその牙(2)


「触らないで!」

手を叩かれ、拒絶された。

「えっと、その・・・私もまだ混乱してて。だから、その・・・ごめんなさい!」

それだけ言うと、彼女はドアに突進していった。事の成り行きをドア口で見守っていた母と癒者は、急いで道を空け、僕に向き直った。

「・・・何も心配する事はないのよ?誰もが最初は驚く事だもの。そのうち慣れるわ。」

母親はそう言って、テーブルにそっとコップを置いた。僕の傍らにぷっくりした癒者が立つ。

「私は癒者だ。安心してくれ。気分はどうだい?」
『肩の包帯が痛いです。』
「・・・そうかそうか。ちょっとキツくしすぎたようだね。なに、すぐに巻きなおすよ。」

癒者はそう言うと、手際よく包帯を巻きなおした。そしてまた、僕に向き直る。

「君の父親にも聞いたが、一応確認しておこう。君は、相手の顔を見たんだね?」
『はい。』
「で、誰だね?そいつは?」
『グレイバック。』

肩に包帯を巻く癒者の力が弱まり、女の小さな悲鳴を押し殺した声が聞こえた。二人は一瞬互いに目を合わせたが、すぐにまた視線を逸らした。その目に恐怖の色を浮かべている。

『母さん、無理しなくて良いんだよ。』
「えっ!?む、無理してなんか全然・・・」
『ティーポットを持つ手が震えてる。』
「ま!私ったら、ついうっかりしちゃって・・・。」
『いいよ、僕がやる。』

母の手からティーポットを手にする。彼女は一瞬硬直したが、抗おうとはしなかった。
砂糖がない。どうやら、それほどまでに気が動転していたようだ。僕はそのまま一気に紅茶を飲み干す。それは苦くて、ちょっとだけ涙の味がした。

『お世話になりました。さようなら。』

困惑する二人の大人を残し、とびきりの笑顔を浮かべて部屋を後にする。







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