二次創作小説
彼の旅路に幸あれ(1)何も悔むことなどない。私はただ、私の意志に従うだけだ。
「先生、私も・・・!」
大事な兄を失った少年。まだ年端もいかないこの少年に、私は今一体何をしてやることが出来るだろう?
“みぶろを狩るための剣術を教えてください。仇打ちさせてください!”
それは果たして、己の命をかけてまでやり遂げなくてはいけないことなのだろうか?私のために、そこまでして、はたしてこの子は本当に幸せなのだろうか?
目の前で、またしても同胞が殺された。綺麗な鮮血が宙をまう。仲間がいとも簡単に次々と切られていく。
「鈴・・・。お前は援軍をよんできてくれ。ここは私達だけで凌ぐ。」
「でもっ、先生!!」
眉根を寄せ、何かを訴えかけようとする鈴。
(どうしてそんな顔をする?)
「鈴。」
私はただ彼の名を短く呟く。いつ襲ってくるか分からぬ敵を前に迷っている暇などない。そんなことは彼も承知のはずだ。
(分かるだろう?私の気持ちが。)
「・・・分かりました。」
そして半ば諦めたような返答が返ってくる。私は彼に気付かれぬよう、小さく安堵の息を漏らした。振り返りざま彼は言う。
「必ず援軍を連れて戻ってきますから!先生もご無事で!では!!」
私は走り去る彼の姿を目にしっかりと焼き付けた。